第20章 研案塔にて
~與儀side~
「キスっ!!??」
松岡ちゃんの様子について問いかけた俺に、花礫くんが発した言葉に絶句した。
俺だけじゃなくて、イヴァ姐さんや療師、平門さんでさえも。
たちの悪い冗談か何かかと思ったけど、意外にも頬を赤くしている花礫くんに事実なんだと実感してしまった。
「どういうこと!?花礫くん!!」
「知らねーよ!てめぇがいきなりしてぶっ倒れたんだよ。」
「ええっ!?ホントに!!?」
(な、なんで…っ!?
全然覚えてないよ!??
でも、そういえばさっきの松岡ちゃん俺と1回も目合わせてくれなかった。
え、じゃあホントに…???
…あれ、俺…何か忘れてるような…
…あ。)
まるで鬼のような形相で俺を見ている姐さん。
かなり怒ってるね。
「與儀…アンタ、私の可愛い松岡に手出すなんていい度胸ねぇ…?」
「ちょっ、ま、姐さん!!松岡ちゃんは姐さんのじゃないし、ね?」
「問答無用!!」
「やっ、ツクモちゃん助けてっ!!」
ツクモちゃんを呼ぶも、なんだか冷めた目をして立ち尽くしてる。
「……與儀、いくらなんでもそれは最低よ…。」
「なんでツクモちゃんまで怒ってんの!?
あっ、姐さん、落ち着いて!!」
今にも足を出しそうな姐さんを止めたのは意外にも療師だった。
「まあまあ、その辺にしといてやれ。一応病み上がりじゃからな。」
「…ちっ。」
(た、助かった……じいちゃんありがと…。)
あのままいってたら、本当に危なかったかも。
療師さんと黙って笑っていた平門さんは話ながらどこかへ行ってしまった。
(いやいやそれより!!…どうしよう…!?)
恐る恐る花礫くんを見上げた。
「…もしかして松岡ちゃん、怒ってた…?」
「さあな。…でも、俺なら絶対口聞かないし顔も見たくない。」
「なぁっ!!?
うっ、そ、そんな…俺、嫌われちゃったかな…」
「お、ま…うぜぇから泣くな!
…ったく、本人に聞けばいいだろ。」
「松岡ちゃんに…?そういえば…どこ行ったんだろう?」
どっちに走っていったかさえも分からない。
「りょうしさんがね、松岡ちゃんとけんあんとー?いくっていってたよ!」
「え…?研案塔…??」