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カーニヴァル~與儀~

第20章 研案塔にて


どうして與儀さんは私に…?


何度考えても不思議で、実感がわかなくて。

あんなことになったのか。


(き、キスなんか…。)



もう真っ赤っかな顔をしてるだろうな。


何度も他のことに意識を集中しようとしたけど、ダメだった。
思いださないようにしても、感触だけは、忘れられない。

唇と唇が触れ合った、あの柔らかい感触だけは。



「ううぅぅ…っっ。」



やっぱり耐えられなくて、変な唸り声がでた。



(…でも、さっきのあの反応…

與儀さんは…覚えてないのかな…?)



考えてみれば、あんなに高熱だったわけだから。



(…ん、あれ?
じゃあそもそも…あれってキス、だったの…??

傾いた顔が…当たっただけの…事故…?)


あの時與儀さんにちゃんと意識があったのかすら分からない。

そもそも與儀さんが私にキスする理由なんてないだろうし。



「……はぁ…。」



好きだって気づいて、その相手とキスをして。
それなのに、與儀さんは覚えてなくて。
何とも思ってなくて。



(…なんか、虚しすぎる…。)


1人で騒いで、馬鹿みたい。

でも、まだ普通に接することはできないだろう。
少し時間を置かないと。


(…與儀さんが覚えてないなら、私も忘れないと…。)



こんなこと忘れられる筈ないのに、無理矢理にまた頭を振った。



「…お主、さっきから何をしておるんじゃ?」

「えっ!?
あ、療師さん!?それに平門さんも…!!」


急に聞こえた声に振り返ると、2人が立っていた。
どことなく、ニヤニヤしてる…?


(まさか、今の全部見られてた…!?)


「大丈夫か?顔色が悪いようだが…。」

「ああ、いえ…っ!大丈夫です…!」


聞いてみようか迷ったけど、見ていなかったかもという期待にかけて止めた。


「そうか。
…そうだ。今から療師が研案塔に行くんだが、着いていってくれるか?」

「研案塔…?」


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