第20章 研案塔にて
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「ぅ…ん…」
「よぎ!」
「おお、やっと起きたかの。」
「あ、れ…ここは…?」
(…よかった…。)
目の前で体を起こすその人を見て、ほっと息を吐いた。
无ちゃんに抱きつかれてて本人はキョトンとしてる。
いきなり倒れてしまった與儀さんを、花礫くんが抱えて療師の元へ運んだ。
危ないとまではいかないけど、かなり熱があったみたいでそのまま病室へ。
それから丸一日眠って今朝、ようやく目を覚ました。
皆與儀さんが心配で丁度様子を見にきてたところ。
「心配したのよ、與儀。」
「えへへ…ごめんねツクモちゃん。」
「ホントよ!ツクモに心配してもらうなんて100万年早いんだから!」
「イヴァ…大袈裟よ。」
ああ言ってるけど、イヴァさんだって心配してたんだ。
花礫くんも、平門さんも、私だって。
…でも、でもね…。
「皆ごめんね…あ、松岡ちゃんも来てくれたんだ…っ。」
「え…」
イヴァさんやツクモの後ろに隠れるように立っていた私に気づいたみたいで、ニッコリと笑顔になった。
「ありがとうっ!俺、迷惑とかかけなかった?」
「え、えっと…」
「迷惑っつーか、な?」
(な!花礫くん!?)
ニヤリと不敵な笑みを浮かべてこっちを見た。
「え?なになに?」
「…覚えてねぇの?お前…」
(ノーーー!!花礫くーーん!!)
「な、な、なんでもないです!!元気になって良かったですね!
じゃ、じゃあ私はこれで…っっ!!」
「あ、ちょ…」
花礫くんを押し退けて、ダッシュで部屋を出た。
ツクモもイヴァさんもびっくりしてたけど、そんなのお構いなしだ。
「うーーっ…っっ!」
元気になってくれて、いつも通りの笑顔を見れて本当に良かった。
これからまた楽しく過ごせるんだと思うと、嬉しい。
…でもね、こればっかりはどうしようもないの。
あんなことがあったのに、普通で接することなんて… 。
あんな、き、キス…
(あああああ…っっ!!)
顔を覆いながら走ってるから、羊さんに変な目で見られた気がする。
(よ、與儀さんと…き、き!?)
立ち止まり、思いだしそうになったのを止めようと思いっきり首を振った。