第19章 風邪×ハプニング
~與儀side~
(…誰も、いない…。)
目が覚めて、当たり前のことなんだけどこういう時には人肌が恋しくなるものなのかな。
(松岡ちゃん…)
彼女の顔が浮かんで無性に会いたくなった。
(どこ…?)
体を起こして立ち上がり、フラフラなのをどうにか壁で支えながら歩いた。
(…頭痛いし、頭ボーッとするな…
早く…)
どこにいるかも分からないけど、とりあえず進んだ。
そしたら広間から声が聞こえて、入ろうとしたけど止めた。
「……」
そこには楽しそうに話してる花礫くんと松岡ちゃんがいて、入っていいのかなって。
(何、話してるんだろう…。)
花礫くんに笑顔を向けてる松岡ちゃんを見てるのが凄く辛かった。
(やっぱり…そう、なのかな…。)
胸が痛くて部屋に帰ろうとしたら、花礫くんと目が合ってしまった。
花礫くんの言葉に反応して松岡ちゃんもこっちを見た。
(松岡ちゃん…。)
「どうしたんですか?」
ニッコリとこっちに歩いてくる松岡ちゃんを見てると、さっきまでのモヤモヤが嘘みたいに消えていく。
心配そうに近づいてきた小さな手をとって、ソファに座る。
ぎゅってしたくて、俺の膝の上に乗せたら固まった。
「與儀、さん…?」
「ん~?」
「これは、なんでしょうか…?」
「えへへ、ぎゅーーっ。」
お腹に腕を回して肩の辺りに顔を埋めた。
(…いい匂い。)
髪からふわりとシャンプーが香った。
(…温かくて、気持ちいい。
いてくれるだけで落ちつく。
けど…君は?
松岡ちゃんはどうなのかな…。)
見下ろした松岡ちゃんの顔は花礫くんを見ている。
(花礫くんだけじゃなくて俺もいるんだよ?
こんなに近くにいるのに…花礫くんなの…?
…どうしてこんなこと思うんだろう。
嫌な奴だな、俺。)
「ねえ、何してたの?」
こんな質問したい訳じゃないのに、でも気になるんだ。
「…マフラーを編んでたんです。」
「へ~え…。」
十夜くんから預かったマフラー。
(…それは、誰のなんだろ。
気になる…。)