第19章 風邪×ハプニング
「……。」
(…疲れた、色々と。)
あれからやたらとひっついてくる與儀さんをどうにか寝かしつけ、今は広間で一息ついているところ。
(一緒にいたいとは言ったけど、あれじゃ意味が違うよ…。
落ち着いてお世話もできない…。)
ソファに座ってまだ途中だった編み物をしながら、ふと前で読書している花礫くんを見る。
无ちゃんとツクモは部屋でお勉強中。
「アイツ、熱で頭狂ったかな。」
視線に気付いたのか顔を上げた。
「はは、どうだろう…。」
苦笑いしか返せない。
「もともとガキみてぇなやつだけど
あそこまでいくとひくな。」
「……」
返事に困った私を見てか、花礫くんは話題を変えた。
「…そういや、良かったな。
手術上手くいったんだろ?」
「え…ああ、うん。そうみたいだね。
あれからまだ会ってないんだ…。」
「ふーん。」
会話をしながら、また花礫くんは本に目を落とす。
(2人共、どうしてるかな?
元気だといいけど…。
…そういえば、花礫くんの大切な人も入院してたって與儀さんが言ってたっけ。
詳しくは教えてもらってなかったけど…聞いてもいいのかな?
いや、でも…結構シビアなところかもしれない…)
じっと考えていると、花礫くんが口を開いた。
「…俺昔ある奴に拾われたんだ。命の恩人ってやつ?
で、そいつのジジィが入院して、その金を俺が払ってた。」
「え…」
初めて知った花礫くんの過去と、私の考えていたことがバレてたのかなという驚き。
「気になってたんだろ?そんな顔してた。」
「あ…うん、ごめんね。」
「別に。」
ずっと目線は下を向いたまま、頬杖をついている。
(花礫くんは…人の心がよく解る人なんだな。
表情だけでもズバリ言い当てちゃうんだから…。)
「花礫くんは優しいね。」
「っ、はあ!?意味わかんねーよ…っ。」
「ふふっ。」
(優しいから、解るんだよ。)
「…笑ってんな。」
怒って体ごと背けられちゃったけど、花礫くんの耳が赤く見えた。
(こんな花礫くん、珍しいかも。)
普段なら見られない姿がなんだか可愛く思えた。
「つか、アイツ大丈夫なのかよ。
熱上がってるってジジィが言ってたんじゃ…
あー、うぜぇ。」