第3章 貳號艇
「え?あっ、えっと、16歳です!」
そしたら花礫くんは少し嫌そうな顔をして、
「…さんじゃなくていい。」
って言った。
「へ?」
よく意味が分からず聞き返すと、
「だから、さん付けじゃなくていいって言ってんの。あと敬語もキモいから。」
(なんだかイライラしてる…?)
「…つーか、无にまで敬語ってどんだけお人好しなんだよ。そんなんじゃ、アイツも嫌がるっつーの。」
「あ、ごめんなさい…。」
つい謝った。
「あーもぉ、なんで謝るワケ?」
私は困惑してしまう。
(何か怒らせるようなことしたかな…?)
分からないけど、花礫くんはため息をついている。
そんな私を見かねたのか、與儀さんが近づいてきて
「花礫くんなりのスキンシップだよ。」
と小声で教えてくれた。
(スキンシップ??)
「おい、聞こえてんだよ。」
そう言った花礫くんの顔が少し赤いような気がした。
(…そっか、気を、使ってくれてるんだな…。)
「ったく。別に怒ってるワケじゃないから。
ただ、これから一緒に生活すんだったら…もっと気ぃ楽にしたらいーんじゃねぇのって思っただけ。」
言い方はキツいけれど、私のことを思って言ってくれてるんだと思うと、嬉しくて、温かい気持ちになった。
「うん、ありがとう。よろしくね、花礫くん。」
そう返事をすると、「あぁ。」と言って花礫くんは部屋から出ていった。
「可愛いねぇ~。」
微笑ましいなと與儀さんはニコニコしている。
「花礫くんも優しいですね。」
「そうだね。…ん?花礫くん“も”?
それってどういうことぉ??」
「あぁ、いえ。何でもないです。」
本人を目の前にしては恥ずかしくて言えなかった。
「がれきはね、やさしいんだよ。
やさしいとね、心があったかくなるんだよ。」
无ちゃんが私の隣にきて言った。
「…そうだね。私も心が温かくなったよ。」
无ちゃんの言う通りだと思いそう言うと、
「ほんとっ?いっしょだねっ!」
って嬉しそうに笑った。