第3章 貳號艇
「ここだよ。」
立ち止まった與儀さんは、そう言って1つの扉を開けた。
「みんな、たっだいまぁーーーっ!!」
「よぎ!おかえり!」
「ただいま无(ナイ)ちゃん!」
與儀さんは男の子に抱きついた。
「くるしいよ…」
「あぁ、ごめんね~?」
「だいじょうぶだよ。
?…よぎ、このひとは?」
无ちゃんが私を見る。
「この子は松岡ちゃん!
今日から輪《サーカス》で保護することになったから、无ちゃんも仲良くしてあげてねっ。」
「うん!
おれナイ。よろしくね、松岡ちゃん!」
そう言って无ちゃんは私に手を差しだしてきた。
「よろしくお願いしますっ。」
私は彼の手をとった。
(无ちゃんか…。)
无ちゃんは、白い髪の毛に赤い瞳の少年。
「松岡ちゃん、この子は花礫クンだよ!」
いつの間にか私の側からいなくなっていた與儀さんは、奥の椅子に座っている男の子にも抱きつこうとしていた。
「やめろっ、ヘンタイ野郎!」
バンッ
部屋に鈍い音が響いた。
(うわぁぁ、痛そう…)
とびつこうとした與儀さんに向かって、花礫くんは持っていた本を顔に直撃させた。
「いったぁぁぁぁーーーいっっ!!!」
案の定與儀さんは顔をおさえて床に倒れこむ。
「よぎ、だいじょうぶ??」
慌てて无くんがかけ寄る。
「がれき、ダメだよ!よぎかわいそう!」
「あ?うっせーよ。そいつが急に抱きついてくるからだろ。」
「…うっ、うっ、酷いよぉ花礫くん…
俺、皆に会えなく寂しかったのに…。」
與儀さんは半泣き状態。
「ハァ?朝飯一緒に食っただろ。」
(朝まで一緒だったんだ…)
てっきり何日も会っていなかったんだと思っていた私は、花礫くんの言葉に呆然とする。
(與儀さんって、子供すぎる…)
呆れた花礫くんは椅子から立ち上がると、こっちに向かってき。
花礫くんは、黒髪に黒い瞳の男の子。
頭にはゴーグルをかけている。
何か言わなきゃと思い、
「あ、あの、松岡ですっ。
これからよろしくお願いします、花礫さん。」
頭を下げながらそう言った。
「…アンタ、歳いくつ?」