第19章 風邪×ハプニング
「はい、薬です。」
「…ありがどぉ。」
「具合どうですか?少し熱上がってますね…。」
薬を飲んで横になった與儀さんから体温計を受け取り、濡らしたタオルを頭に乗せる。
「ん…」
それが気持ち良かったのか、そのまま寝息をたて始めた。
(答える元気もないほどなんだよね…。)
眠っててもうなされてて、流れてくる汗を何度も拭いた。
「早く良くなって下さいね…?」
そっと手を握り、少しの間だけ與儀さんの隣で目を閉じる。
うつってもいい。與儀さんが良くなるなら。
(良くなったら、いつもみたいに一緒にいたい。
…與儀さんもそう思ってくれてたらいいな…。)
その願いが届いたのかどうなのか。
次の日の朝からずっと一緒にいることができた。
…というか、離れられなくて。
熱が治った訳じゃない。
じゃあ何故なのか。それは…
「あ~ん。」
「……」
おかゆがのったスプーンを與儀さんの口元に運ぶ。
「ん、美味しいっ。」
「……」
…それは、與儀さんの性格が突然変わってしまったから。
いや、性格が変わったというよりは、テンションがおかしくなった?
昨日のしんどそうな顔とはうって変わってニコニコしてる。
朝ご飯を持ってきたら、「食べさせてっ」って。
甘えん坊というか…幼児化?してしまったんだ。
びっくりして広間に行って皆に話したら、まさかって言われた。でも実際に見てみて理解してくれて。
「わあい、花礫くんだぁ~っ。」
「…いつもの倍キモくてうぜぇ。」
「よぎ、おねつ…だいじょうぶ?」
「えへ~、まだしんどいかなぁ~。」
「…私、療師呼んでくる。」
凄くうざそうな花礫くん。
ツクモは青ざめて行ってしまった。
様子を診にきた療師が言うには、高熱で思考がおかしくなったんだとか。
マラソンとかでよくある、何とかハイ…的なやつだそうだ。
「しかし、気持ち悪いのぉ。」
「療師ったら…そんなに見つめないで?
俺照れちゃう。」
「…わしには無理じゃ。
松岡、あとは頼んだぞ。」
「え!え!?ちょっ、ま…」
待ってと伸ばしたのとは反対の手を、ベットに座ってる與儀さんに掴まれた。