第19章 風邪×ハプニング
「何かご用ですか?」
「まあ、茶でも飲むとええ。」
ほれと温かいコップとおせんべいを机に置かれ、とりあえずお茶を手に取り口の前へ。
「與儀さん、大丈夫ですかね…?」
「気にせんでもただの風邪じゃ。すぐ治るのぉ。」
「よかったぁ。」
ホッとしてお茶を口に含んだ。
「心配かのぉ?」
「…そりゃあ、1番大事な人ですから…。」
「ほ…?」
私の発言に驚いている療師さんの視線から逃れるように、またお茶を飲んだ。
(今の言い方じゃあ、好きって認めたも同然だもんね…。
…まあ、療師さんのおかげっていうのもあるからな。
一応の報告は、ね。)
療師さんの話を聞いて、気付いたこともあったから。
「ほっほっ、そうか、そうじゃったのぉ。」
療師さんは髭をさすりながら笑っている。
その笑い方は前のニヤニヤとは違って優しい目だ。
「何かしてやりたいと思っとるじゃろう?」
「え…どうして分かるんですか?」
「そういうものじゃ。」
「…?」
首を傾けて療師さんがおせんべいにのばす手を見つめる。
「前に言うたのう。大切な者には傍にいてほしいものじゃと。
あれはな、逆も同じなんじゃよ。」
「逆も同じ?」
「そうじゃ。
病気や怪我で弱ってるのが自分にとって1番の者なら、傍にいてあげたいと思うのじゃ。」
「……。」
「傍にいて何か支えになってやりたい…ての。
今のお前なら、解るじゃろ?」
(…與儀さんが苦しんでるなら、自分に出来ることならなんでもしてあげたい。
さっきみたいなのは緊張するけど、他のことなら…。)
「…はい、そうですね。」
気恥ずかしくて空になったコップのかわりに私もおせんべいを手に取った。
「まあ、いつなんどきでも一緒にいたいという気持ちもあるじゃろうがな。」
「え?」
「なんでもないのぉ。さ、そろそろ仕事するか。
さっきご飯食べたんじゃったな。それなら薬は夜に持ってってやってくれ。」
「はい。」
その後お土産にともらったお菓子を皆で食べたりしたけど、夜までは少し長く感じた。