第19章 風邪×ハプニング
少し前屈みになり、置いてあったタオルで首もとを拭いてあげる。
(体熱いな…。汗でびしょびしょだし。
きっと…)
「服の中も汗凄いですよね。脱げますか?」
何も考えずに聞いた一言だったけど、すぐ上からとても焦ったような声が聞こえてきた。
「えっ、ぬ、脱ぐ…!??」
「え…」
顔を上げると、熱のせいか真っ赤になった與儀さん。
よく状況を整理すると、前のめりになって與儀さんの首もとに顔を寄せてる。
そこに「脱げますか?」なんて。
「わああ、ごめんなさい…っ!」
(ぬ、脱ぐなんて何言って…っっ!!
てゆうか近いっ!!)
あわあわと体と手を離し立ち上がる。
「着替え、ここに置いときますね!あとおかゆも!
後で取りに来ますから…何かあったら呼んでください!」
「ぁ…ありがど…」
まくしたてるように部屋を出た。
「……っ。」
羊さんに不思議そうな顔で見られたけど、小走りで横を通りすぎた。
廊下の壁にもたれ、多分真っ赤だろう顔を隠す。
気付いたのはほんの昨日のことなのに、意識するとドキドキが止まらない。
(恥ずかしいよ…。)
あんな近い距離にいたんだと思うと、変な感じだ。
「…きっとしんどいよね。」
さっきまでの與儀さんを思いだす。
少し荒い息にいつも以上に温かい手。
「早く、よくなってほしい。
何か出来ることないかな…あ、そうだ。」
やっぱり笑ってる顔の與儀さんが1番好きだから。
(療師さんのとこ行こうっと…。)
薬を取りにきてほしいと言っていたのを忘れるところだった。
もたれていた壁を手で押し、むやみに走ってきた道をUターンして療師さんがいる場所へ足を運んだ。
「療師さん、いますか?」
「おお、薬を取りにきたのか。ほれ。」
「ありがとうございます。」
用はそれだけだったので、じゃあ…と部屋を出ようとしたが、お菓子を食べている療師さんの前に座るよう促された。