第18章 自覚
気付いてしまった今、この腕の中はとても居心地がいい。
「…あの、松岡ちゃん…?」
「はい?」
少し戸惑った様な声に顔を上げる。
「そ、その…どうしたの…?」
「…?」
何がと思い見上げると、與儀さんの視線は密接した部分…
「あっ、ご、ごめんなさい…っっ!」
慌てて背中に回し直した手と体を離す。
(私、なに抱き締めて…っ。)
居心地はいいけど、恥ずかしいことをしてるのに変わりはない。
與儀さんの顔も、多分私の顔も真っ赤だ。
「いや…ごめん…。
あっそうだ、これ…」
椅子の脚に立て掛けてあった袋を差し出される。
「これは?」
「十夜くんが渡してくれって。」
袋から取り出してくれたのは編みかけのマフラー。
「ああ、これ…まだ途中だったんだの忘れてた。」
「…もしかして、病院でこれずっと編んでたの?」
「はい、実はこれ…あれ?」
與儀さんに渡そうと思って…そう言おうとしたけど、受け取ろうとした時に少し触れた與儀さんの手がさっきより熱いことに気付く。
「與儀さん、熱あるんじゃないですか?
さっきくしゃみしてたみたいだし…。」
「え、そんなことないよ?
それよりさ、俺、松岡ちゃんと仲直りできて嬉しいんだ…っ。」
「ぁ…
…私も、です。」
うっすら赤みがかった顔が無邪気に笑って心臓がドキリと跳ねた。
(別に喧嘩してた訳じゃないけど、こんな風にまた話せて良かった…。)
「もう秘密事はなしね?何かあったら必ず言ってっ。
じゃないと俺…おかしくなっちゃう。」
「はい、約束です…。」
優しい瞳に映されながら、小指をからめて約束をした。