第18章 自覚
「…俺ね、決めてたことがあるんだ。
まだ松岡ちゃんがこの艇に来たばっかの頃、君が辛い時支えてあげようって。一緒にいてあげるんだって誓った。
それからずっと輪《サーカス》に居ることになった時も、君を守るんだって誓ったんだ。
でも、何1つ出来てないんだもん…情けないよね。」
「……」
(そんなこと、思っててくれたんだ…。)
そんな風に考えてくれてた人がいたなんて。
「…與儀さんは、情けなくなんかないですよ?」
「え…?」
そっと與儀さんの腰に腕を回し、抱き締め返した。
「與儀さんはいつも一緒にいてくれたじゃないですか…。だから私はここに居ようって思えたんですよ…?」
「……」
不思議そうにしている顔に笑かける。
「それに、與儀さんは私を守ってくれました。何度も何度も。」
「…俺は守ってなんかないよ…?
怪我させたし…。」
與儀さんの視線が私の手に巻いてある包帯へ向いた。
悲しそうな、自分を責めてる様な瞳だ。
(違う、違うよ…?
そんな顔しないで…。)
「…あのね、與儀さん。守るっていうのは怪我させないってだけじゃないんです。」
「…?」
「一緒にいて楽しく話して笑って…心が安らいで。
そういうのも、私は“守る”ってことだと思うんです。」
與儀さんはまた不思議そうな顔してるけど、
(ちゃんと、解ってほしい。
私の気持ち…。)
「无ちゃんやツクモや花礫くんの優しさとか、與儀さんの…明るくてキラキラの笑顔に癒されるんです。
で、思うんです。ああ今守られてるんだなぁ…って。
優しい皆に守られて、今の自分がいるんだなって。
皆が…心の支えなんです。」
「心の支え…?」
「はい。支えてくれてるっていうのは、守ってくれてるってのと同じでしょう?
だから私は皆に守られてる。
もちろん、與儀さんにも。」
ね?ってまた笑ってみせると、與儀さんはポカンと口を開けてた。
それから困った様に笑った。
「…じゃあ、俺も守られてるんだね、皆に。」
「そうですね、无ちゃんや花礫くんやツクモに。」
「松岡ちゃんにも、だよ…?」
そう言って、まだ残っていたらしい涙を優しく拭ってくれた。