第18章 自覚
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何もすることがなくて、ただベットの上でボーっとしてる。
あれから无ちゃんと花礫くんは毎日お見舞いに来てくれて、ツクモもイヴァさんも時間を縫って足を運んでくれた。
…2人には凄く怒られたけど。
だけど與儀さんは来なかった。
だから、ドアから顔を覗かせたその人を見たとき凄く驚いた。
久々に見た顔はいつもと変わらなくて嬉しくて。
でもいつもみたいに笑ってなかった。
顔を見せられなくて下を向いた状態で中へ促した。
(くしゃみ、してたな。
大丈夫かな…。)
言いたいことはいっぱいあったけど、言葉に出来ない。
どこを見ていいかも分からなくてさ迷っていると、與儀さんの口が開いたのが見えた。
「…あのね、松岡ちゃん…」
(やだ、聞きたくない…)
「ごめんなさい…!」
きっと怒られるんだろうと思い咄嗟に謝った。
下を向いているのでどんな顔をしてるか分からない。
「…言わなかったこと、怒ってますよね…。
本当にごめんなさい…っ。」
声が震えてて、目から何かが溢れてくる。
(だめ、泣いちゃ…。
悪いのは私なんだから…。)
「…松岡ちゃん。」
(え…)
上から優しい声が聞こえて、ゆっくりと上げた顔を與儀さんの胸に沈められた。
「…ねえ、覚えてる?
前にさ、泣きたい時は俺の胸を貸すって言ったの。」
「……」
あんなこと言われたのは初めてで、凄く嬉しかったのを今でも覚えてる。
「ダメだね、俺。
あんなこと言ったくせに泣かせてるのは俺なんだもん…。」
泣いてるのがバレてるのだろう、優しく背中をさすってくれる。
「ごめんね。俺、松岡ちゃんに八つ当たりしてた。
…ホントはね、自分に怒ってたんだ。」
(…?)
どういうことだろう、と思い見上げると目が合う。
久しぶりに見たその瞳は綺麗な紫だった。
「君を守れなかった自分にイライラしてたんだ。
守れなくて怪我させた自分自身に…ごめん、最低だよね。」
「……」
(自分自身に…?なんで…)
そんなのおかしいと言おうと思ったけど、與儀さんの口がまた開いたので止めた。
とりあえず今は聞いてみようと。