第18章 自覚
~與儀side~
(寝てる、かな…?)
やっぱり少し入るのに気が引けて俺は扉の前でうろうろしてた。
様子を伺ってみるけど分からない。
(でも…声とか聞こえないから1人だよね?)
まだ夕方だけど、もしかしたら寝てるのかもしれないし…と色々考えてしまう。
「ハックション…っ!
…ああ、やっぱり風邪かな…。」
廊下は冷えて、くしゃみがでてしまった。
「…誰ですか?」
「え…」
そんなに大きくしたつもりはなかったのに、中から声が聞こえて驚いた。
「……」
そっと取っ手に触れ、ドアを横に引いて顔をだした。
「俺、です…。」
「與儀さん…!」
現れた俺にびっくりしてた。
けど、すぐに顔を俯けてしまった。
「…入って下さい。」
「うん…。」
ドアを閉めて、ベットの側の椅子に座る。
(松岡ちゃん…)
全然こっちを見てくれない。
視線を泳がせて、どうしたらいいか困っている様に見える。
(俺のせいだよね…。
俺が、あんな態度だったから…。
謝らなきゃ。ちゃんと。)
「…あのね、松岡ちゃん…」
「ごめんなさい!!」
「…え?」
逆に謝られて、俺の目は丸くなった。
(なんで、君が謝るの…?)
まだ下を向きながら、震える声で続ける。
「…言わなかったこと、怒ってますよね…。
本当にごめんなさい…っ。」
「あ…」
(そうか。
俺のあの感情…松岡ちゃんに向けたものだって勘違いさせたよね…。)
「…松岡ちゃん。」
「…」
ゆっくりと上げた顔には涙が浮かんでいた。
その顔を引き寄せて、俺の胸にもっていく。
「…ねえ、覚えてる?
前にさ、泣きたい時は俺の胸を貸すって言ったの。」
「……」
「ダメだね、俺。
あんなこと言ったくせに泣かせてるのは俺なんだもん…。」
背中を優しくさすってあげる。
「ごめんね。俺、松岡ちゃんに八つ当たりしてた。
…ホントはね、自分に怒ってたんだ。」
「…?」
腕の中で松岡ちゃんは俺を見上げた。
その瞳を見つめる。
「君を守れなかった自分にイライラしてたんだ。
守れなくて怪我させた自分自身に…ごめん、最低だよね。」