第17章 正体 ~與儀side~
(守りたい…か。)
「…でも、俺は皆守りたいよ?
松岡ちゃんも花礫くんも无ちゃんも…。」
「あーっ、だからぁ…
自分でってことだよ。」
「…?」
また首を傾けた。
(十夜くんの話、意外にムズいよ…。)
またため息をつかれたけど、今度は優しい声だった。
「誰かに任せるんじゃなくて、自分でそいつを守る。
自分の手で、自分の力で。
何を犠牲にしてでもいいから、アイツだけは…
って、そう思うのが好きってことなんだと…思う。」
「…そう、なんだ…。」
(…大人だなぁ。
こんなことまで考えてるんだ。
…俺が子供すぎるのかな?)
「…俺ナニ言ってんだろ…。」
十夜くんはまた顔を真っ赤にしてた。
難しかったけど、何となくは分かったよ。
(…俺が松岡ちゃんを女として好きかって聞かれると分からない。
そんなこと考えたことないもん。
でも…今するべきことは分かってる。)
「…ありがとう十夜くん。俺、行ってくるよ。
松岡ちゃんに会ってくる。」
「あっそ、勝手にしろ。
つーか今の話…言うんじゃねぇぞ。」
「うんっ、約束ね…っ。」
「フン!
…あ、そだ。これ持ってってやってくれ。
アイツのなんだ。」
「?分かった。」
渡されたのは紙袋。
中身は…毛糸?
(何だろう…?まあいっか。)
「じゃあ、またね!
松岡ちゃんに早く謝らないと…。」
立ち上がり、歩きだす。
「…は?謝る??
告白じゃねぇのかよ…??」
部屋を出る途中後ろからそんな声が聞こえたけど、振り返らなかった。
だって、ドアを開けて横を見たら
真っ赤な顔をした繋さんが立ってたから。
「あ…」
「ーっ!!!」
声を出そうとしたら、ものすごい勢いで首を横に振られた。
(そっか…そうだよね。)
俺は頷き、小さくお辞儀をしてまた歩きだした。
(…ありがとう、十夜くん。
頑張ってね。
俺も…ちゃんと向き合うから。)