第16章 ぬくもりも切なさも
さっきまで與儀さんが触れていた部分に触れる。
(温かい…。)
この温もりが好き。
いきなり触られた時はびっくりしてドキドキしたけど、安心した自分がいたのを知ってる。
そこから伝わってくる温かさが、いつも私をホッとさせてくれる。
でも今は…
苦しい。
怒らせてしまったこともそうだけど、
與儀さんのああいう顔を見ると何て言うか…
心がモヤモヤする。
いつもぐるぐるしてごちゃごちゃして、どうしていいか分からない。
楽しそうに笑ってて、子供みたいにはしゃぐ與儀さんを見ていたいって。
…こんな気持ち…どうしてだろう?
前からだったかな。
それとも療師にあんなこと言われたから
頭が勝手に意識してるのかな…。
分からない。
自分のことなのに、分からない。
ただ今は、苦しくて…
切ない。
「與儀さん…。」
ギュッと布団を握った。
それから何日か経ったけど、病室に與儀さんが来ることはなかった。