第17章 正体 ~與儀side~
~與儀side~
「ハックション!」
(風邪引いたかな…。)
「はあぁ…」
何回目のため息だろう。
あれから1度も病室には行ってない。
松岡ちゃんに会うのが気まずいから。
(気まずくしたのは俺なのに…。)
でも、どうしても一緒にいると苦しくなる。
(どうしてかな…。)
「おい、大丈夫か?」
「え…」
気付けば俺を十夜くんが覗きこんでいた。
「さっきからため息ばっかだけど。」
「ああ…ごめん…。」
ここは病院。
俺は今研案塔でのもろもろを終えた繋さんとその付き添いの十夜くんを、元居た病院へ送ってきたところ。
手術が成功したっていっても、まだ完全な回復ではないからね。
少しの療養が必要らしいんだ。
「…アイツと何かあったのか?」
「えっ?」
医者と話をしている繋さんを待っていると、いきなりそんなことを聞かれた。
(なんで分かるの…?)
「そんな顔してる。」
まるで俺の心を読んでるみたい。
「…何か出来ることがあったら言ってくれ。
あんなことさせちまったんだから。」
「…」
(何か出来ること、か。)
「…ここがね、苦しいんだ。
ズキズキって痛くて。」
胸を押さえた。
(笑われるかな…。
俺の方が、ずっと歳上なのに…。)
でも十夜くんは笑ったりしなくて、真面目に話を聞いてくれた。
「…なんで?」
「分からない…。
でも病室にいる松岡ちゃんを見ると、辛い…。」
「それって…怪我したアイツを見ることがってことか?」
「…?」
軽く首をかしげた俺に、ベットに座りながら十夜くんは言う。
「怪我をしてるアイツを見るのが辛い…それって、怪我をさせた自分にムカついてるってことじゃねぇの…?」
「俺に、ムカついてる…?」
「だからぁ、守れなかった自分が情けなくてイライラしてるってこと!」