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カーニヴァル~與儀~

第16章 ぬくもりも切なさも


「それじゃあ…っ!」


與儀さんの顔からは心配の色は何1つ見られなかった。



「よかったぁ…っっ。」



本当に安堵して大きく息を吐いたら、與儀さんに右手を握られた。


(え…)



「與儀さん…?」

「ホントに優しいね…。」


さっきチラッと見えた包帯に手が添えられた。


「怪我させちゃって…ごめん…。」

「な…謝らないでください…っ!
與儀さんは悪くないじゃないですか…。」


そう言うけど顔色は変わらなくて。
いたわる様にその部分を優しく撫でられた。


「痛かったよね…。」

「全然痛くないですよ!ほらっ、ね?」


(だから心配しないで…?)


強がって腕を持ち上げてみるけれど、與儀さんの顔は晴れない。



「…どうして言ってくれなかったの?
あんなに危険なこと…。」

「ぇ…」


怒ってる様にも見える顔。


(…やっぱり、怒るよね。

秘密にしてたんだもん。


それで迷惑までかけて…。)


「ごめんなさい…。」


俯きながら小さな声で言うと、與儀さんはまた苦しそうな顔をした。


「違う…」

「…與儀さん?」

「ごめん、今日はもう戻るよ…。」


そのまま立ち上がり、さっさと部屋を出ていってしまった。


「ぁ…」


何も言えず、私はただその背中を見送ることしか出来なかった。



(どうしよう。
すごく怒ってる…。)


分かってたことだけど目の前にするとやっぱり辛かった。


(悪いのは私なのに…。)




「はぁ…」


ため息をついて窓の外を見る。

そんなに高くは飛んでいないみたいで、時々風が窓を叩く。




目を閉じる。



…夢を、見ていた。


ずっと傍に與儀さんがいてくれた夢。


ただいてくれるだけたけど、それがとても心地よくて。



こんなこと言うと怒られるかもしれないけど…


起きて1番最初に見たのが花礫くんで、がっかりした。


いや…この言い方だと語弊がある。

花礫くんだからじゃなくて、きっと无ちゃんやツクモでもそう思ってしまっただろう。


…與儀さんじゃない。


あの時そう思ったから。


なんでそんなこと思ったのかは分からない。

でも、療師の言葉…


『弱ってる時は大事な人に傍にいてほしい』


もしそうなら…?

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