第16章 ぬくもりも切なさも
きっと真っ赤の顔で助けを求めるも何もしてくれない。
それどころか、花礫くんのそれが意地悪そうに変わった。
「おい无、飯食いに行くぞ。」
「ごはん…?」
「おおええのぉ。わしも何か食べてこよう。
じゃあ、若いもん同士後はごゆっくりの。」
「えっ、ちょっ…」
无ちゃんは何も解ってないようだったけど、あとの2人は絶対確信犯だと思う。
(ひ、酷い…っ。
こんな状況で1人にするなんて…
大体なんで療師さんはあんなこと言い出したのっ?)
3人が出ていった扉を唖然と見ながら考えていると、與儀さんも同じ方に顔を向けて寂しそうな顔をしたのが見えた。
「…ああ、そっか…。ごめんね。」
「え…どうして謝るんですか…?」
返事はなく、そのままゆっくりと体を離された。
(近いから…いきなり抱きついてごめんってこと…?)
その答えをもう1度聞くことは私には出来なかった。
あらためて與儀さんはベットの横の丸椅子に座る。
(こうしてみると…あの日みたい。)
私達が出会ったあの日
…正確には襲われて目を冷ました日。
(確か…)
「あの時も與儀さん抱き締めてくれましたよね。」
「え…ああ、そうだったね。」
凄く昔のことのように思えるのが不思議だ。
「あの時のも…守れなかったね…。」
「え…?」
何のことを言っているのか解らなくて與儀さんを見たけど、笑ってごまかされてしまった。
(…今日の與儀さん、いつもと違う気がする…。)
そう思うけどなんとなく聞けなくて。
そしたら2人共無言になってやっぱり気まずくて。
(きっとそう思ってるのは私だけなんだろうけど…。)
さっきのことを意識するなと言われても無理な話だ。
とりあえず何か話をと思って考えたら、大事なことを聞くのを忘れていたことを思いだした。
「繋さんどうなりましたか!?」
それは1番聞かなければならないこと。
このためにあんな危険なことをしたのだから。
(こんな大事なことを忘れてたなんて…っ。)
いきなり大きな声をだした私に驚いた顔をしたけど、與儀さんは優しく笑ってくれた。
「大丈夫。燭先生が診てくれて、手術も終わった。
もう何ともないって。」