第16章 ぬくもりも切なさも
~與儀side~
「どうしてあんなことさせたんですか、平門さん!!」
今俺がいるのは執務室。
もちろん目の前には平門さんが。
「あんな危険なこと…っ!!」
机に手をつき強く見つめる。
「……」
さっきからずっと黙ったままだったけど、訴える俺をただじっと見てようやく口を開いた。
「お前が怒るのも無理はないな。
…だが、この作戦を考えたのは俺じゃなく松岡だぞ?」
「え…松岡ちゃんが…?」
(どういう、こと…?)
平門さんは顔の前についていた手で眼鏡をかけ直し、続ける。
「入院しているという彼女を助ける為に松岡が自分で考えたんだ。
能力者と遭遇させることで燭サンに診てもらえると思ったんだろうが…よく考えついたものだ。」
「関心してる場合じゃないでしょ!!
どうしてオッケーしたんですか!??」
(止めるとかあったでしょう!?
それでも聞かないっていうんだったらせめて…)
「せめて俺に言ってくれても…っ!!」
それが苦しくて悲しくて悔しくて。
(俺じゃ、ダメだったの…?
“役に立たない”“頼りにならない”
そう、思ってたのかな…。)
「言うなと言ったのは俺だ。
悪かったな。」
「…っ」
素直に謝られてどうしていいか分からない。
(平門さんは悪くない。
そんなこと解ってる…。)
微妙な沈黙が流れる。
それを破ったのはノックの音。
その後に花礫くんの声。
「入るぞ。」
「花礫、くん…?どうしたの?」
「さっき松岡が目を開けた。」
「っ!!ホントにっ!?」
驚いて見ると、花礫くんの後ろで无ちゃんが嬉しそうに笑ってた。
(松岡ちゃんが…っ!!)
「俺、行ってきます!!」
平門さんの顔はなんだか気まずくて見れなかったから、返事を待たずに花礫くん達と病室に走った。