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カーニヴァル~與儀~

第16章 ぬくもりも切なさも


无ちゃんを助けるのに必死だったから、怪我するなんて考えてもなかった。


(心配させたのは悪いと思う。

でも…
自分のために泣いてくれる人がいることがこんなに嬉しいなんて。)


こんな時だからこそ、気付くことがある。



「…心配してくれてありがとう。
もう大丈夫だよっ。」

ニッコリ笑ってそう言った。
そしたら无ちゃんの顔もみるみる明るくなって。

「よかった!!
おれ、おれ…ごめんなさい…っ!!」

「うん、もういいよ。ね?」


无ちゃんの涙を拭ってあげながらまた笑いかける。


「…俺も悪かった。」

无ちゃんの奥で花礫くんもこっちを見ていた。

さっき目をそらしたのは罪悪感を感じていたからなのかもしれない。
いつもなら言わないのにと思うと、やっぱり嬉しくて。

「本当に大丈夫だから、ありがとうっ。」


改めて触れた皆の温かさ。

見渡すと皆がいて、笑ってくれて。
それだけで私の心も温かくなっていく。




けど、



「…そういえば、與儀さんは…?」


起きた時から本当はずっと気になっていた。
あの騒がしさがないことを。


「アイツならクソ眼鏡のとこ。
呼んできてやろうか?」


(クソ眼鏡…

平門さん?)


「あ、ううん、いいの。
聞いてみただけだから。」



(ホントはそうしてほしい。


…でも、ちょっと怖いよ。

何も言わなかったこと、怒ってるんじゃないかって。


不安で仕方ない。)


そんな私の気持ち、療師には分かってたのかな?

「2人で呼んできてやれい。」

って。


「どうしてですか…?」

2人が出ていってから訪ねてみた。


「弱っている時は1番大切な人に傍にいてほしいもんじゃろう。」

ひげを触りながら告げる療師に、目を瞬かせる。


「1番、大切な人…?」


(與儀さんが?


私にとって皆は大切な人。


でも、1番って…?)


「なんじゃ?お主は與儀のことが好きなんじゃろう?」

「………え?」
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