第16章 ぬくもりも切なさも
「ん……」
瞼の上から眩しさを感じでゆっくりと目を開ける。
(ここ、どこ…?)
目の前に広がるのはただひたすらの白。
それが一気に見覚えのある顔に。
「気付いたのか?」
「……花礫、くん…?」
いつもとは少し違い、どこか焦ってる様にもとれる顔。
「…ここは…?」
ゆっくりと体を起こそうとするのを制される。
「動かねぇ方がイイ。
…ジジィ呼んできてやるから待ってな。」
そう言うと花礫くんはどこかへ行ってしまった。
「……」
横になったまま、右手を動かして宙にかざす。
温かい感触が残ってる。
「…?」
服がめくれたひじの辺りに白い包帯が見えた。
もう片方の手でそこを触ろうとした時、ガラッとドアが開いた音がした。
「おお、意識が戻ったか。」
(療師さんの声…。)
今度は視界いっぱいに優しい顔のおじいさんが。
「大丈夫かのぉ?」
コクコクと顔を縦に振る。
「あの、ここは…?」
「ここは艇の病室じゃよ。」
起き上がろうとするのを手伝いながら答えてくれた。
(病室…
そっか、あの時私…)
「皆は…?」
(十夜くんは?无ちゃんは?繋さんは…?
あのあと一体…?)
不安なのを感じとったのか、療師はポンポンと頭を撫でてくれた。
「皆無事じゃよ。
ったく、自分の心配もせんと。」
呆れたように優しく笑っている。
「おい、いつまでそこにいんだよ。」
「?」
療師の後ろにいた花礫くんがドアの方へ話しかけている。
そっちに目をやると、隠れる様にこちらを伺う无ちゃんが。
「无ちゃん?どうしたの…」
「うわああん!!」
「??」
泣き出して抱きついてきた。
「无ちゃん??」
「うっ、ひっ…っ」
腕の中で泣きじゃくる无ちゃんに声をかけるも話が出来ない。
困って花礫くんを見ると、ふいとそらされた。
「自分のせいでお主が怪我をしたと泣いておるんじゃよ。」
「あ…」
(そっか、あの時无ちゃんを庇って…)
まだ泣いている无ちゃんの頭を撫でてあげる。
「无ちゃん、ありがとう。」
「ぇ…?」
突然のお礼に戸惑って見つめてくる。