第14章 タイムリミット
ハーッと息を吐き出し少し落ち着いたみたい。
『…あとは手を引いて隣に座って楽しくお話するだけよっ。』
「こっち座りましょう?」
まだ何か言っている與儀さんの手を取ってソファに連れていく。
「う、うん…。」
ぎこちなく歩いているのが掴んだ手から伝わってきた。
ソファに腰を下ろし、何を話そうか考える。
(先に考えておけばよかったな。)
そう思ったけど、最近起こったことを思い返すと話したいことはいっぱいあった。
十夜くんと繋さん、それぞれの話と2人共通の話。
2人の名前の話も、素敵だと話した。
それからずっと気になってた花礫くんの過去の話。
本人にはなかなか聞けないので、與儀さんだったらと聞いてみた。
(久々にゆっくりお話できて嬉しいな…。)
與儀さんの隣だと安心して、つい色々話しすぎてしまった。
でも與儀さんはあまり楽しそうじゃなくて。
話をしている間、時々いつもとは違う顔をする。
それでも普通に話してくれるから気にしないようにしたんだけど、お風呂を終えた花礫くんと无ちゃんを「2人もどう?」って誘ってからは全く喋らなくなってしまった。
喋らないけど一応はいる。
ずっとしたの方を見てるけど。
2人のことを本当は気にしてた花礫くんに近況報告をしたりしてみても、やっぱりそっちが気になって。
「…大丈夫ですか、與儀さん?」
「えっ、なにが…?」
「さっきからずっとボーッとしてるの、やっぱり疲れてたんですよね…。
無理に誘ってごめんなさい…。」
(気づかないなんて私馬鹿だな…。)
「いや、疲れてる訳じゃなくて、ただ…」
「…ただ?」
「…いや、何にもない。
もう寝ようか…。」
「そう、ですね…。」
気まずい空気のなか、そのまま解散した。
(…“俺も一緒にいたかった”っていうのは嘘だったのかな…。
気を使って言ってくれのかも。
それに、あの反応。
あんなに慌ててたけど、私何か間違えたのかな?
繋さんに聞いてみないと…。)
小さくタメ息を吐き、病室の扉を開けた。
(あれ…?)
扉のむこうは、昨日の楽しそうな様子が嘘のように暗く重たく沈んでいた。
「…繋、さん?十夜くん…?」