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カーニヴァル~與儀~

第13章 2人の事情


次の日は、繋さんは検査で病室には私と十夜くんの2人だけだった。


(聞いていいのかな…?)


「…十夜くん、本当は昨日どこ行ってたの?」



目は合わせず、下を向いたまま答えてくれた。


「…院に行ってたんだよ。」

「院に?」



真剣な顔で話している。


「…俺じゃ、アイツを助けられないから。
院の人達が入院費を少しだしてくれてるんだ。」

「そうだったんだ…。」

「ありがたいと思ってる。

…でも、それじゃ足りないんだ…。」


悔しそうに拳をきつく握る。


「このままじゃ入院費すら払えなくなる…っっ。

俺みたいな奴はどこも雇ってくれねぇし、お前らに…輪《サーカス》に頼るしかねぇんだよ…っっ。」

「十夜くん…。

ごめんね、もうちょっと待ってほしいんだ…。

ひら…上の人がね、考えてくれてるから。」


まだ平門さんから返事をもらっていない。


(色々考えないといけないことがあるんだよね、きっと…。)


「…解ってる。こんなチャンスが巡ってきただけでもラッキーだもんな。」

「十夜くん…。」



沈黙が流れる。


気を使ってだろう、十夜くんが話題を変えてくれた。


「…そういやさ、アンタここに来ていつも何してんの?
何か編んでるみたいだけど。」

「繋さんに教えてもらってマフラー編んでるんだよ。」

「ふーん。誰かへのプレゼントか?」

「…まあ。」


なんだか気恥ずかしくなり言葉を濁したけど
そんねことは気にせず、十夜くんは続ける。

「アイツだろ?あの金髪。」

「ええっ、なんで分かるの!?」


見事当てられ、ちょっと焦る。


「なんでって、見てたら分かるだろ。」

「見てたら分かる??」


(そんなに分かりやすいのかな、私…。)


「ああ、あの金髪分かりやすすぎ。」

「へ…?」


(私じゃなくて與儀さんが分かりやすい?)


「それってどういう意味?」


尋ねた私に十夜くんは呆れた顔をした。


「お前、分かんねぇの?

…まあいいや俺には関係ないし。


つかさ、編み物なんか編んでねぇで一緒にいればいいじゃん?」

「一緒に?」

さっきの意味も解らなかったのに、さらによく解らないことを言われて答えに困る。

「そういうプレゼントとか贈りたいような奴なら、こんなとこ来てないで一緒にいてやれよって意味。」
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