第12章 寂しい…?
~與儀side~
「おかえりメェ」
「ただいま~…。」
「どうしたメェ?元気ないメェ。」
調査から帰ってきた俺のテンションの低さは羊でも解るほどらしい。
「元気なくはないんだけどね~…。」
「?」
心配してくれてるのは有り難いんだけど、今は話す気分じゃないから横を通りすぎる。
(なんだかなー…。)
ふらふらと壁にぶつかりながら歩いていると、前から平門さんが。
「なんだ、與儀。ふらふらして。
体調でも悪いのか?」
「平門さぁぁぁ~~ん…。」
大きな体にしがみつく。
「体調は別に悪くないんですけど~…。」
「じゃあなんなんだ、そのしゃべり方。
ん、今日は一緒じゃないのか?」
その1言にピシッと体が固まった気がした。
「…一緒じゃないって、誰と…?」
顔を平門さんの胸元に埋めたまま、聞いてみる。
「誰って、松岡だよ。あと花礫と无か?
ここ数日あまり一緒にいるところを見ていないからな。」
「だってぇ~…。
花礫くんたちは部屋にいるけど、松岡ちゃんはいないんですもん…。
…病院行ってるから。」
ああ、そんなことを言っていたなと納得の平門さん。
「そうか、お前が元気ないのは寂しいからか。」
「寂しい?」
「今まではずっと一緒で、それが当たり前だと思っていただろう?
だから少しでも離れたら寂しいと感じたんじゃないのか?」
「んー…?」
(…確かに、今まではずっと一緒だったよ?
朝から晩までずっと。
でも今は違う。
だから寂しい…
んんんー…?)
何かひっかかりを覚えつつも、平門さんから離れる。
「新しい任務も始まったし、仕方ないことだよ。
きっとすぐ慣れるさ。」
「んー…そう、ですよね~…。」
(そっか、そうなのかー…。)
「…さすが平門さんですね。なんだかちょっとだけすっきりしたかも。
…ありがとうございます。」
平門さんの横を通り抜け、自分の部屋へと帰っていった。
「…納得してないみたいだな。
寂しいんじゃないとすると
それは嫉妬だぞ、與儀。
…いや、まだヤキモチか?」
ふっと我が子の成長を可愛く思う親の様に、残された平門は笑みを浮かべた。