第11章 盗人騎士と病室の姫
「お待たせっ、松岡ちゃんっ。」
「與儀さん、1人ですか…?」
「花礫くん達先帰っちゃった…。
で、平門さんが俺達も今日は帰って来いって。
色々話すことがあるしね。」
「そうですか…。
じゃあ繋さん、今日は帰りますね。」
「ええ、いつでも待ってるから。」
「はいっ。」
部屋をでた私達を、十夜くんが待っていた。
「…なあ
アイツのこと、助けてくれんの…?」
「それは、1度帰って上に聞いてみないとなんだ…。」
「そう、か…。」
與儀さんの答えに残念そうな十夜くん。
「大丈夫だから待ってて。また来るから。」
平門さんならきっと何とかしてくれるだろうと笑顔を見せた。
それを見て、十夜くんの顔も少し明るくなった。
「…ああっ、じゃあな…っ。」
水いっぱいになったじょうろを持って十夜くんは部屋へと入っていった。
それを見送り私達も歩きだす。
「…花礫くん、どうしちゃったんでしょう?
急に帰るだなんて…。」
(何かあったのかな…。)
考える私に與儀さんが教えてくれた。
「…きっと、十夜くんを自分と重ねたんだと思うよ。
花礫くんも昔ああいうことしてたからね…。」
「そうなんですか…??」
初めて聞く話。
(…花礫くんにも、助けたい人がいたってことだよね…。
…まだ皆のこと、全然知らないや…。)
当たり前のことだけど、それでも自分が情けなくなる。
「はぁ…。」
それがため息としてでてしまった。
「…松岡ちゃんが気にすることないよ。
輪《サーカス》に居る人達は、皆色んな過去を持ってるから。
…そういえば、繋さんとどんな話してたの?」
「え…どんなって、
十夜くんの話、とかですよ?」
マフラーのことは、できるまで内緒にしておくことって繋さんに言われた。
(その方が喜んでくれるだろうって言ってたけど…
嘘ついちゃったな…。)
「…そっか…。」
「與儀さん…?」
どこか浮かない顔をしている。
「…十夜くんのこと、凄く気にかけてるんだね…。」
「え…?何て言ったんですか?」
その声はあまりに小さくて、聞き取れなかった。
「あっ、いや
…んーん、何でもないっ。
さっ、飛ぶよ…っ。」