• テキストサイズ

カーニヴァル~與儀~

第11章 盗人騎士と病室の姫


十夜くんは工場で働いていることになっているらしい。

お金の元手を聞かれた時にとっさにそう答えたんだそうだ。



「工場の人達に迷惑かけちゃだめよ?」


「分かってる。子供扱いすんな…っ。」



置いてあったじょうろを片手に、十夜くんは部屋から出ていった。




「…俺帰る。」


「えっ、花礫くんっ?なんで急にっ??」


突然言い出した花礫くんに與儀さんは慌てているが、気にすることもなく出ていってしまった。


「ガレキ、おれもいくっ!」


「えっ、ちょっ、无ちゃんまでっ!?

もおっ!松岡ちゃん、待っててくれる?
ついでに平門さんに電話してくるからっ!」


與儀さんも慌てて後を追う。



「花礫くん、どうしたんだろ…?」


「あれ位の男の子はホントに手がかかるわね。」


「…ふふっ、ですね。」




2人笑い合っていると、ふと繋さんの上のかごが目にはいる。


「これ何ですか?」


「ああ、これはね…マフラーを編んでいるの。」


かごの中から沢山の毛糸を取り出して、編みかけのマフラーを見せてくれた。


「うわあっ、スゴいですねっ!」


「ここにいると暇でね。
こんなことしかすることがないのよ。」


「編み目が綺麗…
お上手なんですねっ。」


「こんなの、誰にでも出来るわ。」



(誰にでも…?)


「…じゃあ、私にもできますかね…?」


期待を込めて聞いてみた。


「もちろんよっ。
よかったら、教えましょうか?」


「いいんですかっ!?」


「ふふっ、いいわよ。
その代わり、私の話相手になってくれるかしら?」


「はいっ、しばらくはこの街にいるんで
私なんかで良ければいつでもっ!」


「決まりねっ。仲よくしましょう。」



(気さくで優しい人だなぁっ。

こんな美人さんに教えてもらえるなんて嬉しいっ。)



「私、頑張りますねっ!」


「ふふっ、そんなに張りきって
作れたら渡したい相手がいるの?」


「渡したい相手ですか?

んー…しいて言うなら與儀さんかな。
いつもお世話になってるから、そのお礼に?」


「あらいいわね。渡したい相手がいるのは良いことよ。
じゃあ、彼を喜ばせられるように頑張りましょうっ。」


「はいっ!」



2人微笑み、約束を交わした。

/ 104ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp