第11章 盗人騎士と病室の姫
「ここだ。」
案内されたのは、病院の一部屋。
「おい“ケイ”、入るぞ。」
ガラッと乱暴にドアを開けると、そこにはベットの上に座る1人の女性が。
「…十夜。今日も来てくれたのね。
…その人達は…?」
「あっ、えっと私達は…」
「十夜のお友達かしら?」
「そ、そうです!
俺達、十夜くんのお友達ですっ!」
「そんなんじゃねぇよ…っ!」
慌てる私達を気にせず、女性は優しい笑顔を向けてくれる。
「どうぞ、入って下さい。」
「失礼しま~す…。」
部屋に入ると十夜くんが椅子を用意してくれた。
「ありがとう、十夜くん。」
「…別に。」
「ウフフ、素直じゃないんだから。
…ごめんなさいね、昔からこうなの。」
(す、すごく綺麗な人…。)
少し上…與儀さん位の歳だと思う。
十夜くんと同じ茶色の長い髪は透き通る様に綺麗で、美人という言葉がピッタリの人だと思った。
「私は繋(ケイ)。
あなた達は?」
「あ、私は松岡です…っ。」
「俺は與儀ですっ。
で、こっちは花礫くんと无ちゃんっ。」
「おれナイ、よろしくっ。」
「…。」
「よろしく。
…皆さんはどうしてここへ?」
「えっとー…せっかく仲よくなったんで
十夜くんのことをもっとよく知りたいなーと思いまして…。」
(…輪《サーカス》のことは言っちゃ駄目なんだよね…。)
ここに来る途中、十夜くんに言わないでほしいと頼まれた。
(盗みをやってるなんて言えないもんね…。)
「…そう。
ごめんなさいね、こんな格好で。」
「いえっ、気にしないで下さい…っ。
突然押しかけた私達が悪いんですからっ。」
「来てくれて嬉しいわ。
…お見舞いに来てくれるのはいつも十夜だけだから。」
「なんだよ、俺じゃ不満なワケ?」
「そんなこと言ってないでしょう?
もう、すぐ拗ねるんだから。」
繋さんの話し方はとても上品で、大人の女性って感じ。
それに、
(…2人とも仲がいいとかじゃなくて、
もっとこう…)
誰も間に入れないような、2人だけの空気がある気がした。
「十夜、今日は何をしてたの?」
「別に、いつもと同じ。
…工場行って、それから街ぶらぶらしてただけ。」