第2章 輪《サーカス》
(良かった…)
平門さんの言葉にホッとため息をつく。
「ああ見えても燭サンの腕は確かだからな。」
笑いながら言う平門さんの隣では、
物凄い勢いで與儀さんが顔を横に振っている。
「でも、血を浴びていないならどうして…?」
「君はまだ完全に回復していないだろう?
市民を守るのが我々の仕事だ。」
当然のように平門さんは言った。
(そっか…)
「じゃあ、ここ(病室)で大人しくしていますね。」
そう言った私に平門さんと與儀さんは少し驚いた顔をする。
「いや、ここからは出てもらう。
燭サンも暇ではないからな。」
「??じゃあ…」
「君には與儀たちと行動を共にしてもらうよ。」
「與儀さん、“たち”と…?」
「うん!ここは輪《サーカス》の貳號艇(にごうてい)って言う艇(ふね)でね。俺や平門さん以外にも、たっっくさんの仲間がいるんだよ!!
だから、皆がいるところで一緒に過ごそうね!!」
ニコニコと與儀さんが言う。
(貳號艇…)
「分かりました…。」
私が了解すると、平門さんは頷いて
「じゃあ與儀、後は頼んだぞ。」
と言い出ていった。
「はーい!」
(與儀さんは元気だな…)
どう見ても自分より歳上の男の人の子供っぽい姿を見ているうちに、少し和んでいた。
「ここにいたいって言うならそれでも良いんだけど…
燭先生怖いからやめといた方がいいよ?」
少し声を潜めて言う與儀さんが可笑しくて、
私は笑いながら
「與儀さんの仲間のところへ連れていって下さい。」
と頼んだ。
「うん!
じゃあ、その検査服からこっちのに着替えてくれる?
できたら呼んでね。」
(あ…)
1つ言い忘れていたことを思い出す。
「與儀さん、」
「ん?なーに?」
「あの、助けてくれてありがとうございました…!」
「っっ!
…うん!どういたしまして。」
與儀さんは出ていった。
少しはにかんだ様な顔が可愛かったな…
何て思いながら、私は與儀さんに貰った服に袖を通した。