第2章 輪《サーカス》
「…サーカス?」
そういえば、と與儀さんが言っていたことを思い出す。
「こっか、ぼーえいきかん…?」
「そう!もしかして俺たちのこと知ってた!?」
與儀さんが嬉しそうに聞いてくる。
「あっ、いえ、えっと…
與儀さんが言ってたのを思い出して…」
(ごめんなさい)
期待を裏切ってしまったと思い、
少し落ち込んでしまったかなと與儀さんを見る…
(え?)
瞳をキラキラさせて嬉しそうな顔をしている。
「平門(ひらと)サン、聞きましたか!?
いま、この子、與儀さんって…っっ!!!」
「あぁ、聞いていたよ。良かったな。」
子供の様にはしゃぐ與儀さんに大人な対応をする平門さん。
…そして呆れかえった燭さん。
「…お前達といると不愉快だ。
私はしばらくこの艇(てい)にいるから覚悟しておけ。」
そう言い残し、燭さんは部屋から出ていった。
チラリと與儀さんを見ると、肩をびくびくさせて真っ青になりながら震えていた。
「それで、輪《サーカス》って…?」
話を戻した。
「輪《サーカス》とは、国家防衛最高機関
…つまりは犯罪者やその組織を取り締まる集団のこと。」
平門さんが説明してくれた。
「…犯罪者って、“アレ”もそうなんですか…?」
「あぁ、“あれ”は能力者(ヴァルガ)といって、
ああいうのを滅死(めっし)させるのが俺たち貳號艇(にごうてい)の仕事なんだよ。」
(ヴァルガ…)
自分を襲った者の正体は解ったが、まだあの時の恐怖は消えない。
「あのっ、能力者って…!!?
滅死ってどうやって??
輪《サーカス》って一体…」
「落ち着いて」
平門さんが優しく制する。
「まずは、君のことを教えてくれるかな?」
(あ…)
まだ自分の名前を名乗っていないことに気づく。
「私は…、松岡…です。」
「松岡か…
松岡、君にはしばらくここにいてもらうよ。」
「え?」
「能力者に遭遇した場合、奴等の血液を浴びていないか検査をする必要がある。」
平門さんはそう教えくれた。
「血液を浴びていたら…?」
急に怖くなる。
が、
「浴びていれば色々しなければいけないが…
大丈夫。君が寝ていた間に検査は終わっている。
血液は浴びていないよ。」