第11章 盗人騎士と病室の姫
「サーカスっ!?離せっっ!!!」
「わっ、ちょっと、暴れないでっ!!
だめっ、顔はやめてーーっ!」
私達も慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですかっ!?」
「なんとかー…。
キミー、なんでこんなことしたのー?」
泥棒の正体は男の子で、
與儀さんはその上にまたがって盗んだと思われる財布をひらひらさせている。
「うっせえっ!!返せよっっ!!!
金が必要なんだよっっ!!」
「返せって、コレ君のじゃないでしょう?
困ったなー…どうしよー??」
(お金が必要って、何か理由があるのかな…?)
捕まった男の子はどこか焦っている様で、私にはあまり悪い子には見えなかった。
「與儀さん、とりあえず話を聞いてみませんか?
何か事情があるのかもだし…。」
「んー…そうだね。」
財布を持ち主に返し、私達は近くのベンチへ移動した。
「んっと~、まずは君の名前
教えてくれる?」
「…十夜(トーヤ)。」
「十夜くんねっ。
十夜くんさあ、ああいうことよくしてるの?」
「関係ねぇだろ…っ。」
キツい言い方に與儀さんはあわあわしてる。
十夜くんは花礫くん程の長さの髪が綺麗な茶色の男の子。
(同い年位かな…?)
まだ若く、整った顔をしているけれど
どこか疲れた顔をしている気がした。
「…十夜くん、話してくれないかなぁ?」
座っている十夜くんの前にかがみ、話をしてみる。
「松岡ちゃん?」
「何か理由があるんだよね?
それを話してほしいの。
私達、力になれるかもしれないし…。」
私の言葉を俯いて聞いていたけど、少し疑った眼差しで顔を上げた。
「…あんたら、サーカスなんだよな?」
「ぅ…」
改めて聞かれると何て答えていいものか悩んでしまう。
(まだ輪《サーカス》に入ったばっかりだし、
他の人とは少しちがうしな…。
説明が難しい…。)
そんな私に気づいたのか、與儀さんが答えてくれた。
「そうだよ。俺達は輪《サーカス》。」
「…そうか。」
決心したように、渋々話だした。
「…病気、なんだ…。」
「トーヤくんが?」
素直な无ちゃんの質問に、違うだろと花礫くんが頭を叩く。
「俺じゃねぇっ。
俺じゃ、ないんだ…。」