第10章 旅立の朝
「お父さん、お母さん…っ!」
次の日、朝ご飯を食べるとすぐに
平門さんと與儀さんに付き添われて家に戻った。
「国家防衛機関輪《サーカス》第貮號艇長の平門と言います。
この度は、凛さんが輪《サーカス》と行動を共にすることになりましたが…
本当に宜しかったのですか?」
「ええ。」
「あの子の決めたことに文句なんてないわ。」
「そうですか。
では、責任をもって彼女を育てさせていただきますね。」
「よろしくお願いします。」
2人は今日の午後に出発するらしく、家の荷物はほぼ片付けられていた。
「ここで過ごしたんだね。」
「はい。
…もう、来ることはないんですね。」
與儀さんに付き合ってもらい家の中を見て回る。
そんなに広くないけど、私が育った場所だからゆっくりじっくりと。
「…寂しい?」
「…今になってちょっとだけ。
でも、これからのことを考えると
ワクワクの方が大きいんです。」
「そっか。
じゃあ、とびっきり楽しく過ごさないとねっ。」
「はいっ。」
今まで過ごした家に別れを告げ、外に出た。
「もういいのか?」
「はい、平門さん。
しっかりお別れしてきました。」
「そうか。
じゃあ、俺達はあっちで待ってるから。」
お父さんとお母さんに挨拶をして、2人は少し離れたところで待機してくれた。
「…お父さん、お母さん、
今までありがとうございました。」
「何言ってるのよ。
それじゃもう会えないみたいじゃない。」
「え…?もう会えないんじゃ…??」
「そんな訳ないだろう。会いたくなったらいつでも会える。
それが家族ってもんだ。」
「…そっか、そうだよね。
手紙いっぱい書くね。」
「ええ、待ってるわ。楽しい話聞かせてね。」
「おいで。」
2人の間に挟まれるように抱き締められる。
「お父さんお母さん、大好き…っ。」
私達も大好きだよ、と優しく返してくれた。
「…さあ、お行き。」
ゆっくり体を離して最後のお別れをする。
(またいつか、会える日まで…)
「…行ってきます…っっ!」
大きく手を振り、待ってくれている新たな仲間の元に駆けだした。