第9章 落ち着かない
お手伝いしてくれてるのは例の羊さん。
「羊さん、修理受けなくていいの?」
「…。」
「あいかわらず無口だなー…。」
そんなとこも可愛いかったりする。
(親バカなのかなぁ?)
なんて苦笑いしていると、
「あれ~、誰と話してるの?」
與儀さんが入ってきた。
「あ、與儀さん。
羊さんと話してたんですよ。」
「なるほど~。
後片付けお疲れ様っ。何か手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です。
與儀さんはどうしたんですか?」
「えへへ、実は今日お昼まで寝てたんだ…。
だから、ね。」
そういうとソファに座り、置いてあった雑誌を読み始めた。
(なんだか、この前みたい…。)
思い出すのは2人でココアを飲んだ夜のこと。
(今日も飲んでくれるかな…?)
洗い物を終わらせ、この前と同じようにココアを2人分用意する。
「はい、どうぞ。」
机にコップを置き、與儀さんの隣に座る。
「うわぁ、ありがとうっ。
また作ってくれたんだね…。」
「今回はこの子も手伝ってくれたんですよ。」
そう言って羊さんを膝の上に置く。
「この子…。」
「平門さんが言ってました。
この子だけ修理を受けなかったって。」
「そうみたいだね。
…その羊がね、君が居なくなった後に部屋に行ったらいたんだ。
それで、君の声で話しだしたんだよ。」
「私の声で?」
「うん。
平門さんの話だとね、凛ちゃんがこの羊に話したことを録音してたんじゃないかって。」
「私が話したことを…?」
(それって、“あれ”だよね…?)
「じゃ、じゃあ、あれ聞いたんですか…?」
「うん、皆で聞いたよ。」
(うそーーー…っっ。
あんな、変なこと言ってたのを…っっ??)
「恥ずかしい…。」
「…どうして?」
「だって、あんな何言ってるか分からないの…。」
(皆聞いてたなんて…。)
照れ隠しに顔を背ける。
…がその顔をむにゅっと挟まれる。
「與儀しゃん…?」
「恥ずかしがることないよ?
君の気持ちが聞けて嬉しかったって、皆そう思ってる。」
「そう、でしゅかね…?」
「うんっ。
…そういえばさ、羊と話してる時…
泣いてたの?」