第8章 役目
なんとか椅子に座ってくれた與儀さんだけど、やっぱりまだ拗ねてる。
「…おれが松岡ちゃん連れてきたのに…。
それなのに、皆酷いし、キックとかするし…。」
「そんなにいじけるな與儀。
ほら、この鍋美味しいぞ。」
「…ちゃっかり平門さんまで食べてるし。
誰も俺のことなんて…。」
「せっかく松岡が作ってくれたのよ。
楽しくいただきましょう?」
「そうだよよぎ、ポカポカだよ。」
「うー…」
「…私も、與儀さんに食べてほしいんです…。
だめですか…?」
「そんなこと言われたらぁ~、
食べるっ!!」
(変わり身早っっ…。
…でも良かったかな。)
「はいどうぞ。」
お皿に取り分けたおかずを手渡す。
「ありがとうっ!
…俺、実は昨日の昼から何にも食べてないんだよね…。
もう、限界なの。
だからっ、いっただっきまぁ~すっっ!」
(昨日のお昼からって、あの後からだよね…。
私のせいだ…。)
「與儀さん、ごめんなさい。
私があんなこと言い出したから、気分を悪くしちゃったんですよね…。」
「ん~?でも、こんなおいちいの食べられたきゃら、もぉいいの。
しょれに、松岡ちゃんが戻ってきてきゅれたしね。」
「あ…。」
(忘れるところだった…。)
「…平門さん、私に何か出来ることはありませんか?」
「ん…?」
(自分に正直になっここに居ると決めたけど、
何もしないでただ置いてもらうなんてだめ…。)
「…ここに置いてもらえる為の仕事とか、ないでしょうか?
何でもしますんで…っ。」
(…もし、何も無かったらどうしよう…。
振り出しに戻るのかな…。)
でも、その不安はあっけなく消え去った。
「そのことは平門が考えてくれたわ。」
「平門さんが…?」
ふっと笑うと、話してくれた。
「…内には高性能の羊が居て何でもしてくれる。
だが、今回の様にメンテナンスにだすこともあるから、
その場合の料理や掃除などの雑用。
それと、この艇は空を飛んでいるだろう?
街に降りることはあるが、空にいる方が多い。
それがストレスにならない様に皆の面倒をみてほしい。
まあ、簡単に言えば艇の人間の体調管理ってことだ。」