第7章 ホントの気持ち
「お父さん、お母さんっ。
そうゆうことなんで、松岡ちゃんはこれからも輪《サーカス》に居ることになりましたっ。」
「ぇ…?」
2人とも、まだ状況が呑み込めずポカンとしている。
それは私も同じで。
「ちょっ、ちょっと待って下さい與儀さん!
“居たい”とは言いましたけど、“居る”と言ってはませんよっ!」
「え~?同じことだよぅ。」
「違いますっ!
それに、これからは皆で外国に住むんですから…。」
「ん~、松岡ちゃんは外国行きたいの?」
「そ、それは…」
「…もう、我慢ばっかりしなくていいんだよ?
正直な気持ちを言ってほしい。
きっと松岡ちゃんのお父さんとお母さんもそう思ってるよ。」
(お父さんとお母さんも…?)
2人を見ると、優しく微笑んでくれた。
「…お前の人生だ。
お前のしたいようにすればいいよ。」
「私達は貴女に幸せになってほしいの。
だから、貴女の好きな方を選んでほしい。」
「お父さん、お母さん…。
でも、お別れ…だよ…?」
「それは淋しいけど、お前が決めたことならお父さん達は何も言わない。」
「そうよ。それが親だもの。
…でも、たまには手紙くらいちょうだいね。」
「…。」
皆が私の背中を押してくれているみたい。
(…もっと、正直にならなきゃだめなんだ…。
自分の人生
したいようにしていい…。)
「決まった?松岡ちゃんの気持ち。」
(ずっと、決まってた
私の気持ち…。)
「お父さんやお母さんとは離れるのは淋しい…
…でも、それよりも今は皆と…
輪《サーカス》の人達といたい…っ。」
(これが正直な気持ち。)
「やっと言えたね。」
上からのぞきこむ與儀さんの顔は今までに見たことない笑顔。
「…與儀さんでしたか?
その子を…松岡をお願いしてもいいですか?」
「もちろん。
松岡ちゃんのことは俺が責任を持って幸せにしますから!!」
「頼もしいわね。ホントに、辛い思いはあまりさせないで下さいね。」
「任せて下さいっ!
もう、俺がいれば何の心配もありませんからっ。」
ピースサインをして得意気に笑った。