第7章 ホントの気持ち

そして今に至る。



「與儀…さん？
どうして…。」



突然現れた彼に、動揺を隠せない。




「ごめんね、松岡ちゃん…。」

「え…」

「あんな風に言って、本当にごめん。

俺、君の気持ち全然解ってなかった…。


…1番解ってあげなきゃだったのに。」



苦しそうな顔をする。


「謝らないで下さい…っ。
悪いのは、私の方です。
あんなこと言ったりして…。ごめんなさいっ。」


「いいんだ。
松岡ちゃんの考えがあったんだよね。


…でもね、勝手に出てくのはさすがにダメだと思うなぁ。
俺、怒ってるんだから。」



少し膨れた顔をする。



「あ、ごめんなさい…。」


「フフっ、嘘だよ。
そりゃびっくりはしたけど、怒ってなんかない。」


「ほんとですか…？」


「ほんとだよっ。

…だって、松岡ちゃんのホントの気持ちを聞けたから。」


「私の、気持ちを…？」


「うんっ！…まあ、その話はまた後でね。
俺は、直接聞きたくてここに来たんだからっ。」


「…？」


「もう、教えてくれるよね。ホントの気持ち。
…これからどうしたいかを。」




（本当の気持ち…？

これから、どうしたいか…？



そんなの、決まってる。



けど…）





「…でも、私が居ても…」


「もうっ、その私がっていうのヤダ。
そんなのどうでもいいから、今思ってること言って？」


「ぇ…」





與儀さんの優しい瞳を見ていると、



（言いたい…）


口が勝手に動きだす。




「…居たいです…」


「どこに？」


「輪《サーカス》に…
みんなの、…」


「…皆の？」




（みんなの…）



「側に、私も居たいです…。」



顔を上げ、しっかりと與儀さんを見つめながら答える。



「…うん、良くできました。」


優しく笑って頭をぽんぽんと撫でてくれた。




（言っちゃった。

でも…）



後悔よりも、すっきりした気分。




「今の言葉、嘘じゃないよね？」


「はい…。」



ゆっくりと首を縦に振る。



「よし、じゃあ決まりだねっ。」


「え…」



ぐいっと私の腕を引っ張ると、両肩に手を置き
ただただ呆然と見ていた両親に向き直った。