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カーニヴァル~與儀~

第7章 ホントの気持ち


「…そのことなんだけどね。」

「?どうしたの?」

「…お父さん達、また戻らないといけないんだ…。」

「え…。」

「仕事が順調でね。本格的にあっちに住もうと思ってる。」

「うそ…。」



口元に運びかけたシチューをお皿に戻す。





(…行っちゃうの?
また、皆で暮らせると思ったのに…。)






「し、仕方ないよねっ。仕事だもん…。
私は大丈夫だから…。」




少し複雑な笑顔を作る。




「違うんだ、松岡。」

「え?」

「松岡にも、一緒に来てほしい。」

「え…」



持っていたスプーンを落としそうになる。





(一緒に…?)




「あんなことがあったのに、1人になんてできないわ。
ね、私達と一緒に行きましょう?」

「お父さんもお母さんも、お前のことが心配でたまらないんだ。
一緒に居れば安心できる。」

「お母さん、お父さん…。」






(…そうだよね。心配かけてちゃだめだよね。


外国か…。


…きっと、昔の私なら嫌だって言うんだろうな。

この村に居たかったから。





…でも、今
私が居たい場所はここじゃない。




…1番居たい場所は、ここじゃない。





だけど、そこにはもう帰れない。






それなら…)









「…わかった。2人と一緒に…」





“行く”




そう口にしようとした瞬間、





「行かないです。」





後ろから声が聞こえた。






(え…)





突然の声に、皆一斉に振り返る。






いつの間にか開いているドアと、その前に立つ人。





「…松岡ちゃんは、外国なんて行かない。
そうでしょ?」





見覚えのある整った顔。




聞き覚えのある優しい声。






私が、今、1番一緒にいたい人。






「お待たせ、松岡ちゃん。
迎えに来たよ。」





「よ、ぎ…さん…?」

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