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カーニヴァル~與儀~

第7章 ホントの気持ち


「ただいま…。」




返事は返ってこないと分かっていてドアを開けた。

すると、


「うわぁっ…っ!」

「おかえり、松岡っっ!!」



いきなり女性に抱きつかれた。



(まさか…)



「お、お母さん…?」

「そうよ。
…良かった、どこも怪我はない?
もぉ、ほんとに心配したんだから…」

「まあまあ母さん、落ち着いて。
松岡が困っているよ。」

「お父さんもっ…!」

「…久しぶりだね。会いたかったよ。」




お母さんごと私を優しく抱き締めてくれる。




「ごめんね、松岡を1人にしたから…。」

「違うよっ!
…私がここに居たいって言ったから。
あんなわがまま言って、ごめんなさい。」

「いいのよ。貴方が無事に帰って来てくれて。
さあ、ご飯が出来てるわ。手を洗っておいで。」

「うん…っ!」




いい匂いの湯気が立ち上る机の横を通り、洗面所に向かった。






(…まさか、2人に会えるなんて…。)




久々の再開を嬉しく思う反面、何かまだ拭えないものがあることに気づく。




(…もう、忘れるんだ。)





鏡に映る自分の顔に、笑顔を見せた。









「お待たせっ。」

「もう、遅いわよっ。
さ、早く座って。今日は松岡の好きなシチューにしたの。」

「うわぁっ、美味しそうっ!いただきまーすっ!」

「どうかしら?」

「うん、美味しいっ!」

「母さんの料理は絶品だからなぁ。」

「うふふ、お父さんったら。」




(相変わらず、仲いいんだな…。)



何気ないやりとりに懐かしさを感じる。






「そういえば、どうして帰ってきたの?」

「どうしてって、貴方が心配だったからに決まってるでしょっ!
…急に電話がかかってきて、「娘さんは今サーカスに居ます」なんて言われて心配しない親がいるもんですかっ!」

「そうだよ。凄く心配したんだからね。」

「ごめんね。


…でもね、輪《サーカス》はとってもいい所だったよ。

皆すっごく良くしてくれたんだ…。」

「…そうか。いい人に巡り会えたんだね。」

「うん…。」

「…淋しいの?」

「全然っ!だって、お父さんとお母さんが帰って来てくれたから!」

「あ…」


2人顔を見合わせる。


「実はね…」
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