第6章 残りの時間
「残ら…ない?」
「はい、残りません。」
予想外の答えに固まってしまった與儀さん。
「お気持ちはすっごく嬉しいです。でも…」
「…どうして?」
「どうしてって…私にはここに居る理由がないからです。」
(私がここに居ていい理由なんて、1つもない。)
「居る理由がないなんて、そんなことないっ!
皆、松岡ちゃんにいてほしいんだっ!それでいいでしょっ!?」
「…良くないです。私が居ても何も出来ませんから。」
「まあ、何の仕事もない者を置いておく程
我々も親切ではないからな。」
平門さんが同調してくれる。
「…っ!そんなの、これから考えればいいんですよっ!!」
(そんなこじつけみたいなの、ダメに決まってる。)
「…ここに居たくないの?」
確かめるように、慎重に聞いてくる。
(居たい)
「…居たくないです。」
「家…帰りたいの?」
(帰りたくない。)
「帰りたいです。」
「…俺達、もう2度と会えないかもしれないんだよ?」
(嫌だ…。)
「…関係、ないです。」
「っ!!!
…分かった、もういい。」
バンっと大きな音をたてて與儀さんは部屋から出ていった。
(私、最低だ…。)
「松岡…。」
「…ごめんね、ツクモ。
でも、もう決めてたことだから…。」
堪えられなくなり、私も部屋を出た。
「松岡ちゃんっ!!」
「…ほっとけよ。」
「だって、めからみずがでてた…。」
「水って…。
ったく、アイツもなんであんな嘘つくわけ?」
「松岡にも自分の考えがあるんだろう。」
「無理してまで押し通すことなのかよ。
…ウゼェ。」
「…」
皆それぞれの想いを持ちながら、自分の部屋へと戻っていった。