第6章 残りの時間
(今日のお昼は何だろなー。)
與儀さんを待っている間、そんなことを考えていた。
「お待たせ。」
「あ、與儀さん。お疲れさまでしたっ。」
「…うん。」
「?どうかしましたか?」
「ー…。」
診察室から出てきた與儀さんは、どこかぎこちない。
(もしかして、また燭先生にキツいこと言われたんじゃ…?)
そうならば元気をだしてほしいと思い、與儀さんの手を引っ張り歩きだした。
「…松岡ちゃん?」
「お腹空きましたねっ。今日のお昼は何かなー?」
「…。」
(ダメかなぁ…?)
そっと後ろを振り返ると、そこにはいつも通りの與儀さんが。
「そうだねっ。俺もペコペコだよぉ。」
「ふふ。何が食べたいですか?」
「んー、チャーハンかなっ。」
「いいですねっ、チャーハンっ。
あー、こんな話してるともっと減ってきましたよ。」
「ホントだねっ。よし、早く帰ろうっ。」
「はいっ。」
(…良かった、元気になってくれて。)
ゆっくりな歩みに変え、2人並んで艇に帰った。
「ただいまぁ~っ。」
しーん…
返事がない。
「あれ、羊さんは…?」
「どうしたんだろうねぇ?」
「あら、お帰りなさい。」
羊さんの代わりにツクモが出迎えてくれた。
「ただいま、ツクモ。ねえ、羊さんは?」
「急な機械のメンテナンスがあってね。皆検査に行ってしまったの。」
「じゃあ、お昼ご飯は?」
「それを今考えていたところなのよ。」
「そんなぁ、俺お腹減ったよぉ~…。」
もう動けないと地面にへたりこむ與儀さん。
「…じゃあ、私が作りましょうか?」
「え?」
「私、家では作ってたんですよっ。だから少しは自信あります。」
「家…。」
「與儀さん?」
「あっ、いや、何でもないよっ!」
さっきまで床に寝転がっていた與儀さんが立ち上がる。
「俺、松岡ちゃんの手料理食べたいっ!」
「私も食べてみたいわ。」
「本当ですか?よぉーし、じゃあ頑張りますねっ。」
腕をまくる仕草をしてみる。
「期待してるわ。それで、何を作ってくれるのかしら?」
「えーと…」