第6章 残りの時間
~與儀side~
「さっさと座れ。」
燭先生の鋭い視線が俺を射抜き、おずおずと椅子に座る。
「…」
「あのぉ…」
無言に耐えかね口を開く。
「燭先生?」
「…随分あの少女になついているんだな。」
「へ?」
変な声がでた。
「なついてるって、
ペットじゃないんですから…。」
「さっきのお前の様子だと犬同然だろう。」
「い、いぬ…っ?」
先生の厳しい言い方にショボンとする。
「なついてるとか、そんなんじゃないですよぉ…。
ただ、松岡ちゃんが側にいてくれたら安心できる気がして…」
「何の根拠があってそんなこと。」
「そ、それは…。」
正しい指摘に何も返せなくなる。
「お前は、もうすぐ彼女と離れるということを分かっているのか?」
「え…離れ、る?」
「はぁぁ。」
(え?え??)
燭先生の盛大なため息に必死に話についていこうとする。
「お前の馬鹿っぷりには呆れ飽きた。」
「えええ??」
「いいか?そもそも彼女は輪《サーカス》の人間じゃないんだ。その彼女がここにいる理由は、検査を終えた以上もうない。」
「なっ、そんなっ!?
俺たち、まだ会ったばっかりですよっ!?」
「だからなんだ。
元々少しの間だけという話だったんだろう?」
「そうだけど…
で、でもっ!別に離れる必要なんて…っっ!
これからもここに居ればいいんですよっ!无ちゃんや、花礫くんみたいにっ!」
「アイツらとあの子は別だ。
大体、ここに居ればいいというのはお前の勝手な意見だろう。」
「松岡ちゃんだって、きっと居たいって言いますよっ!」
「そんなこと何故分かる。
…仮にそう言ったとしても、彼女はここで何をする?
お前やツクモと同じ様に戦うのか?」
「そんなこと、させられませんよっ!!」
「じゃあ?
雑用は機械がやってくれるんだろう。
することがなければいる意味はない。」
「…そ、それは、平門さんと相談しますっっ!」
「勝手にしろ。だが、重要なのはお前の気持ちじゃない。
…彼女の気持ちだ。」
そう言うと、もう用はないというように燭先生は書類の整理を始めた。
(松岡ちゃんの、気持ち…。)
「…。」