第6章 残りの時間
廊下を歩く私の足取りは重たい。
(あと、3日…。)
…あの後、着替えて平門さんの所に行った私。
「4日だ。」
「え?」
「4日後には君をもといた場所へ帰せる。」
急な話で驚いた。
だけど、どこがで解っていたのか自分でも意外なほど冷静だった。
「…そうですか。」
「明日は研案塔(けんあんとう)に燭サンを送らなければならないんだ。
だから、それまで待ってほしい。」
「わかりました。」
淡々と返事を返す私を気にかけてか、平門さんが尋ねてきた。
「大丈夫か?」
「え…何がですか?」
「いや、随分冷静なんだと思って。」
「そんなこと、無いです。
でも、当然のことだから…。」
「…そうだな。
まあ、まだ時間はあるから。」
「はい。」
…
…今いるのは研案塔。
平門さんと話したのは昨日のこと。
言われてからも特に変わりはなく、皆と楽しく過ごした。
「いーやーだぁーーっ!!」
「わめくな。さっさとしろ。」
「助けて松岡ちゃん~っ!!
ねえ!検査なんか受けなくたって、俺元気だよねっ??」
「それを調べる検査だ。」
「やだやだやだっ!!」
半泣きの與儀さん。
研案塔に来たついでということで、與儀さんの検査をすると言い出した燭先生。
もちろん本人はめちゃくちゃ嫌がってる。
「與儀さん、落ち着いて下さいっ。
そんなに恐がることないじゃないですかっ。」
「だ、だってぇ…っ!
何されるか分かんないんだよっ!」
「だから検査だと言っているだろう。」
「そうですよっ。ただの検査ですからっ。」
「うぅ…。」
少し考え込む與儀さん。
「…じゃあ、松岡ちゃんもついてきてくれる?」
「え、私もですか??」
「そんなこと駄目に決まっているだろう。馬鹿者が。」
「えぇ…っっ!」
(あ…。)
私の腕を掴んでいる手が、震えてる。
その手をそっと握る。
「大丈夫ですよ。私はここで待ってますから。
終わったら、皆でご飯食べましょう?」
「うぅぅ…。
…わかったぁ、行ってくるよ…。」
しぶしぶ部屋へと入って行った。
(可愛いなぁ。)
壁にもたれ、與儀さんを待つことにした。