第6章 残りの時間
「こんな所で寝てると風邪をひくぞ?」
「…ん…」
「おはよう、松岡。」
「ひらとさん…?
あれ、私なんでこんな所で…」
隣を見て驚く。
「えっ、與儀さん?どうして??」
ぐっすりと眠っている與儀さんの顔が真横にあり、
その手はしっかりと私を抱き締めている。
机の上にはすっかり冷めたココア。
「あ、そうだ…。」
「思い出したか?
…與儀とは、随分仲良くなったんだな。」
「昨日、2人でココアを飲んで…
そのまま寝ちゃっただけです。」
「そうか、風邪をひかれては困るぞ。2人とも。」
「すいません…。
平門さんはここで何を?」
「君に用があったんだが…。
とりあえず、着替えてくるといい。」
「分かりました。」
與儀さんを起こさないようにそっと腰にまわった腕を解き、部屋を後にした。
松岡がいなくなった部屋では。
「與儀、起きれるか?」
「ん…松岡ちゃん…。」
「俺だ。」
「…え~、平門さぁん?」
「おはよう。よく眠れたか?」
「はぁい。んー、久しぶりにぐっすり眠れたぁ。ココアのおかげかなぁ~。
あれぇ、松岡ちゃんは?」
「着替えに行ったよ。
與儀も行くといい。」
「はぁーい。」
立ち上がり、背伸びをしながら答える。
「2人でココアを飲んでいたんだって?」
「はい。眠れないな~と思ってここに来たら、松岡ちゃんがいて。それで、ココアをいれてくれたんですよ。」
「彼女も眠れなかったのかもしれないな。」
「そう言ってました。
あ、でも…すぐに寝てたような?ココアも俺の分あったし…。」
不思議そうにする與儀を横目に、全てを察した様な平門。
「ちゃんとお礼を言っておけよ?」
「そうですねっ。じゃあ俺も言って来ますっ。」
「ああ。」
與儀は部屋を出た。
「ふぅ…。」
段々と大きくなっていっている2人の想いを知ってか知らずか、
平門は小さく息を吐いた。