第1章 出会い
「誰だぁっっ!!?」
女が叫ぶと、私と女の間に向かって人が上から飛び降りてきた。
「うわぁっ!」
驚いた女はひるんで後ろへ下がった。
降りてきたのは、背が高い金髪の男の人。
その人は一度私へ振り返り、
「もう大丈夫だよ」と言うと、女にむき直った。
とても整った顔立ちだと思った。
「こんないたいけな女の子を…」
男の人の声には怒りが滲んでいる。
「貴様一体何者だぁっっ?」
邪魔をされた女は怒りと怨みを混ぜた低い声で問いただした。
「みなぎる男児の心意気!ハート高鳴るキラメキ王子!国家防衛機関(こっかぼうえいきかん)輪《サーカス》第貳號艇闘員(だいにごうていとういん)與儀!」
(…サー、カス?…よ、ぎ…さん??)
聞き覚えのない名前に混乱する私をよそに、
「サーカスだとぉ!!?」
女は焦っている様だった。
「ふ、ふんっ!!例えサーカスだろうとお前みたいな男1人に何ができるっっ!!!」
「誰が1人だって言った?」
男の人が言葉をはっしたと同時に、女の後ろにもう1人男性が現れる。
帽子を被りメガネをかけた、これまた長身だが金髪の人とは違う雰囲気の男性。
「スキがありすぎだな。」
低い声で女に囁く。
「なっ!!!」
女は慌てて後ろを振り向き、男性に飛びかかる
…があっさりとかわされてしまう。
帽子を手に取りながら男性は
「與儀、その少女を頼む」
と言い残し、女へと向かっていった。
「はいっ!」
大きく返事をした金髪の男の人は
その場に座りこんでいる私を見て、同じ高さにしゃがみこむ。
「大丈夫?」
少し不安な顔で私の顔を覗きこむ。
(綺麗な瞳だな…)
真っ直ぐな紫色の瞳に吸い込まれそうになる。
(…さっきから思っていたけど、
こういう状況なのにどうしてこんなに冷静に考えられるんだろう…?)
不思議な気分になる。
何も応えない私にさらに不安になったのか、
男の人は私の肩に手を置き、もう片方の手で顔にかかった髪を除けながら
「あ、えっと…大丈夫じゃないよ…ねぇ?」
と優しく聞いてくる。
(あっ、何か言わなくちゃ…)
そう思い口を開きかけた時、
ドサッ
私は彼の腕の中で意識を失った。