第1章 出会い
「…大丈夫?」
オロオロしながらそう問いかけた男の人が私の顔を覗きこんでくる。
(私どうしたんだっけ…?)
ゆっくりとまぶたを閉じ、悪夢のような記憶を思い出す…
ー2日前ー
小さな村に住んでいる私は買い物のために隣街まできていた。
「これで全部っと」
買い物を終えて帰ろうと歩きだす。
(賑やかな街だな…)
自分が住んでいる所とは比べものにならない人の多さにいつ来ても驚いてしまう。
(早く帰らないと日がくれちゃうし、少し暗いけど…)
人の波を避けるため細い路地にはいった。
少し薄暗くて怖いけど、これなら直ぐに街を出られそうだ。
少し歩いた所で
「そこのお嬢さん」
女の人の声に呼び止められた。
こんな暗い路地で誰かに話しかけられるとは思わなかった。
少し不気味に感じながらも振り向きながら返事をした。
「はい、どうしましたか……
えっ???」
言葉が出なかった。
目の前にいる“もの”が自分には理解できなかったから。
大きく見開いた目。耳まで裂けた口。
ボサボサの髪は地面につく程の長さだ。
(怖い…)
目の前の“もの”を見てそう思わない人はいないだろう。
人の体に手なのか足なのか解らないものが左右4本ずつつき、蜘蛛のような格好をしている。
「お嬢さん、貴女の血を寄こしなさい」
フフフと不気味な笑いをこぼしながら女が言った。
(逃げなきゃ…!!!)
本能でそう思った私は退けている腰に無理矢理力をいれ、
走っているとはとても言えない不格好な姿でなんとかその場から逃げだした。
「はっ、はっ、はっ…はっ!!」
必死に走った。
…だけどその努力も虚しく行き止まりにぶつかってしまった。
「来ないでぇっっ!!!」
必死に叫ぶがどうにもならない。
ガクッ
立っていられなくて膝をついた。
女はどんどん近づいてくる。
「お前の血を、寄こせぇぇぇぇ!!!」
女の手が私の頬に触れようとした。
(もう終わりだ…)
そう思った瞬間、どこからか声が聞こえた。
「ちょっと、何してんの?」