第21章 壱組の人達
「何してるの、喰(ジキ)くん?」
「與儀さん…?」
私の腕を掴んで引っ張っていたのは與儀さんだった。
見上げると、どことなく怖い顔をしてる。
(なにか、怒ってる…?)
一瞬空気がピリッとしたけど、丸眼鏡さんは気にした様子はなかった。
「酷いなぁ與儀くん。僕はこの子に道を教えてあげてただけだけど?」
「道?…そうなの?」
「はい…!」
上から覗かれて、意外と距離が近いことに焦って大きく頷いた。
「そうなんだ…。
喰くん、久しぶりだね。元気だった?」
「ぼちぼちってとこかな。
與儀くんこそ聞いたよ。風邪、もういいのかい?」
「うん!心配してくれてありがとう。
ところで、ここで何してるの?」
「何って、こっちも色々あってさぁ…」
(…?いつもの與儀さんだ。
さっきはびっくりしたな…。)
いきなり引っ張られたこともだけど、聞いてきた声がいつもより低く聞こえたから。
(…ていうか、なんだろうこの状態は…?)
片手は喰と呼ばれた人、もう片手は與儀さんにしっかり掴まれていて、どちらも離す様子はない。
しかも背中は與儀さんにもたれているから、ピッタリ密着している。
2人はそんなこと気にせずに話続けているけど。
そんな私に気付いたのか、喰さんが話題を変えた。
「…ところで與儀くん。彼女困ってるみたいだよ。」
「え、どうしたの?大丈夫??」
「え!?」
また顔を覗きこまれて、狼狽してしまった。
(ああ、近いよ…っっ、與儀さん!)
思ってても言えない。
言いたいけど、言いたくない。
でもやっぱり今は離れたくて助けを求めたら、さっきみたいにまたニッコリ笑った。
「與儀くんが近いからじゃない?その子がそんなに戸惑ってるの。」
「え…」
(な、なんですと!!??)
助けてくれるのかと思えば、とんでもないことを言い出した。
與儀さんが近いから。
確かにそうだけど。
どうして分かったの??
それに…
(どうして言っちゃったの!??
與儀さんに気付かれちゃったら…っっ!)
「そ、そ、そんなわけないじゃないですか!
與儀さんが近いからなんて…何言ってるんですかっ?」
「フフ、ムキになるところが怪しいね。」