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【薄桜鬼】桜飴 (短編集)

第2章 山茶花(サザンカ)-風間千景-


さらさらと風に綺麗な金色の髪が揺れているのを、ただただ見つめていれば、風間様はいつの間にか目の前まで近づいていた。

ふわりとお着物から漂う風間様の香りが鼻をくすぐる。

心の臓は破裂してしまいそうなほどに速く強くどくどくと音を立てているようで…苦しくて苦しくて…思わず胸元をぎゅうっと押さえた。

「変わりはないか?…少し痩せたか。」

そう言いながら、私の頬にかかった結いそびれの横の髪をさらりとかき分け、風間様の掌が頬に触れる。

「お…お久しぶりでございます。」

何か言葉を…と焦って出した私の声は、裏返ってしまって、すぐに気の利いた言葉が出てこない。

恥ずかしさと嬉しさと…もうなんだかわからない感情に、思わずうつむけば、頬に触れていた風間様の指が顎に触れて…その指にゆっくりと持ち上げられるように顔を上げる。

顔を上げた先には、風間様の鋭い瞳が待ち構えていて…吸い込まれるかのように、その瞳を見つめると、まるで金縛りにあったかのように体が動かなくなった。

顎に触れていた風間様の指は、そのまま顎を撫で…頬を撫でる。

恥ずかしくてくすぐったいはずなのに、その感触はとても気持ちがよくて…触れられるがまま、風間様の瞳を見つめたままなことも忘れて、ぼぅっとしていれば…

その指の感触が唇まで到達し…ひと撫でされた。

びっくりして反射的に離れようとすれば、いつの間にか腰に腕がまわっていて、力強く引き寄せられる。

引き寄せられてしまえば、風間様の胸のあたりにこつんと額が当たってしまうほど、私と風間様の距離は近かった。

「…あのっ!か、風間様?」

一体何事だろう?

今私は抱き寄せられたのだろうか?

わけがわからず、混乱した頭と心で、もう息をすればかかってしまうほど近くにいる風間様を見上げる。

その鋭く綺麗な瞳に、私の視線がぶつかった瞬間…

風間様の唇が私の唇に重なった。

重なった唇は、私の唇を食べてしまうかのようで…

その感触と温かさと…風間様への感情で、私の思考は完全に止まる。

…気持ちいい

ぼぅっと思考が止まった私の頭が、そんなことを思ってしまった時、風間様の唇は離れて、ふ、とひとつ笑われた。
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