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【薄桜鬼】桜飴 (短編集)

第2章 山茶花(サザンカ)-風間千景-


「今回はどのような物をご所望ですかな?」

世間話が終わって、本題に入る。

その言葉に風間様は、

「嫁となる娘に着物をあつらえたい。」

と、淡々とお答えになった。

「それはそれは…。風間様のお嫁様でございますか。それでしたら…」

風間様の言葉に、心臓は握りつぶされてしまったかのように弱々しくなってるのがわかる。

私…何を期待していたのだろう?

再びお会い出来たけれど…そもそも私はあの時子供だった。

っていうか…大切なお客様になんてことを思ってるのよ私。

しっかりしなくちゃ…。

弱々しくも速まる鼓動と、胸のあたりに広がる靄のような何かが痛い。

私はからくりで動くお人気のように、何も考えないようにして、祖父に言われるままに持ってきた反物を広げる。

「…どれも違うな。」

お嫁様の為に選ぶ様子を見るのが、こんなにも痛くて苦しいものだなんて…。

私にとっても、今日の商談は楽しみだった。

初めて跡取りとしての仕事をさせてもらえるんだと意気込んでた。

なのに…こんな…こんなに苦しくて…一生懸命になれないなんて…自分が情けない。

「左様でございますか。ところでお嫁様の齢はどのくらいなのでしょう?雰囲気もお聞かせ願えれば、お探しして再び参ります。」

どの反物も値打ちはばらばらだったけれど、うちで扱うお品の中でも最上級のものばかり。

それでも風間様のお嫁様に合うものがないみたいで、見兼ねた祖父は、悩んでいる風間様にそう声をかけた。

「齢はまだ十五くらいか…。」

十五?!

あの時の私と同じくらいだ…。

「それはそれは…。まだまだどんなお色でも似合うお歳ですな。どうでしょう?私のこの孫娘とさほど変わらないようなので、一度孫娘にそのお嫁様を会わせていただくのは。」

おじいちゃん…何言ってるの?

「そしてこの孫娘にお嫁様にぴったりの反物を探しださせましょう。いかがですかな?」

しばらく悩んでいた様子の風間様は、ふん、と鼻で笑う。

「…面白い。と言ったな…千鶴に会わせてみよう。」

そして口元に笑みをのせてそう言うと、

「ですが風間…」

と、部屋の隅に座っていた天霧様が心配そうにしていたけど、問題ない、と一蹴した風間様は、口元に笑みを浮かべいた。
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