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【薄桜鬼】桜飴 (短編集)

第2章 山茶花(サザンカ)-風間千景-


こんな所にお屋敷が?

足場が悪すぎる、獣道のような山道を半刻ほど通った先に、お城のように立派なお屋敷があった。

「お疲れ様でした。本日は御体をこちらでお休めください。主人とは明日、商談の予定です。」

「天霧様、ありがとうございました。では御言葉に甘えまして明日、伺わせていただきます。」

この状況に慣れているかのように、祖父は早々に天霧様に挨拶をして、案内をされた部屋にすたすたと歩いて行く。

用意された部屋は、商談に来た私達には勿体無いような立派なお部屋で、このお屋敷の御主人は相当な身分と財産を持ってる事が分かった。

もう真っ暗な空には、いくつもの星と丸い月が浮かんでる。

辺りは鬱蒼とした木や竹に囲まれていて、大きなお屋敷にら静かすぎる雰囲気が、なんだか不気味だった。

「や…まるで鬼でも出て来そうだろう。」

襖を閉める途中で、空を見上げていた私に、祖父は声をかけてきた。

鬼でも、という割には、にこにことしたままで、

「怖いかい?」

と、聞いてくる。

鬼でも出て来そうだなんて。

そうね…でも…

「鬼を愚弄したらいけないのよ。」

怖くなんかないわ、と言うのも忘れずにそう返事をすれば、

「なんだい、は鬼を知っているのかい。」

と、嬉しそうな声が返ってきた。

「知らないわ。」

一言そう言って、襖を閉める。


違うわ…私は…

鬼を知ってる。

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