第1章 出会いはさようならから
「ちょ、ちょっと待って。お祖父様、情況の説明を…」
そう言って私が前に進み出た瞬間、お祖父様は目をカッと見開き大きく杖をカンッと鳴らすように地面を叩く。
口元は変わらないものの、目元は不機嫌そうに歪められている。
今回も、お祖父様は私の言い分を聞かない。
所詮、私はお祖父様の操り人形って事…。
生きているのに、生きた心地がしない感覚に唇を噛み締めた。
血が出るくらい、強く強く。
痛みを感じなければ、生きてる実感がしない。
その時だった。
「ダーメ」
不意に顎を掴まれて持ち上げられ、組長がすぐ目の前に居る。
驚きのあまり離してもらおうと、私の顎を掴む組長の腕をつかめば、緩んだ口元に彼の指が入り込む。
「俺の体は傷付けても構わねェよ。ンでもさぁ、お前は駄目」
組長は、そう宣言すると私と目線を合わせて優しく微笑んだ。
そして、優しく私の頭を撫でながら「綺麗な体なんだし、大切にしな」と私に語りかける。
「状況説明は後々。一先ず弟達の所行かね?」
優しい微笑みとは裏腹に、言い分は聞かないとでも言うように組長は私を横抱きし強制的にお祖父様の前から引き離した。
腕の中から見たお祖父様の顔は、どの感情も見えやしない。
その表情は、幼馴染と結婚した時と全く同じだった。